「レスターさん、どんな格好で来るんだろ」


待ち合わせの店前で、ユイは独り言ちる。


今日はレスター・シンクレアとの、初デートであった。


「いつもの野暮ったい服装、じゃないよね？
流石にちょっとマシな格好して来るはず」


レスターの普段着は、お世辞にもあまり清潔とは言えないものだ。


仕事柄、仕方ないとは思うがデート……それも初デートである為、せめてマシな格好で来てほしい。


1人でうんうん唸りながら待っていると、件のレスターの声が聞こえてきた。


「よう、お待たせ。慣れない服に戸惑ってよ」


軽快に手を上げながらレスターがやって来た。


しかもユイが心配していた野暮ったい服装でなく、スーツである。


髪をオールバックにし、スーツを着て来たレスターは、まさしく兄であるボー・シンクレアに似ていた。


「レスターさんが、まともな格好だ」

「んだよ、意外そうな顔しやがってよ。
俺だって時と場合を考えてんだ」


不服そうに拗ねるレスターが可愛らしく、思わず吹き出してしまう。


そんなユイに、益々機嫌を損ねるレスター。


やっぱり帰ると言い始めたレスターに、慌ててごめんと謝ると、未だに不服そうであるが許してくれた。