湘北クエスト⁉︎
「こ、こら待てルカワぁ
抜け駆けは許さねーからな!!!
こうなったら褒美は全部オレが戴いてやるっ」
薄暗い塔の中はひんやりとして静寂以外何もない。
永遠に続いていそうな螺旋の階段を登る2人の足音だけがカツンカツンとこだまする。
「ほ、ほんとにこんなところに茨姫はいるのか?」
しばらくするとサクラギが少し不安そうに言った。
「黙ってろ、どあほう」
「んだと?コラァ」
「まだ半分くらいか…」
サクラギの挑発を全く無視してルカワは薄暗い螺旋階段を見上げる。
「おぃキツネ
てめーは何でここまで来た
やっぱり褒美目当てか」
「てめーと一緒にすんな」
「う、うるせー
褒美目当てのどこがわりぃんだ、あ゙~?」
「……別に」
「キィィィ――ッッ!!!
(いったいハルコさんはこんな奴のどこがいいんだ!!)」
やがて2人は塔の一番上に辿り着いた。
百年もの間、開かれる事のなかった扉が重々しい音を立てて動く。
部屋の中はシンとしていた。
「…やっぱりな
思った通りか」
ルカワが小さく呟く。
恐る恐るベッドに近付いたサクラギが叫んだ。
「全然起きてねぇじゃねーか!!!
何でだっ、呪いは解けたんじゃねーのか!?」
美しい茨姫はピクリともしなかった。
だが、ルカワは特に慌てた様子もない。
「ルカワ、てめー
どーすんだよ!!!
これじゃあ、褒美がもらえねぇじゃねーか!!!」
「フン…、知るか
てめーで考えろ」
「んだと?コラァ」
掴みかかろうとするサクラギをヒラリと躱す。
「褒美は諦めろ
見ての通り、茨姫の呪いだけは解けてねーんだ」
「じゃあ、てめーは褒美を諦められんのか!!キツネ男っ!!」
「…オレは最初から褒美目当てだなんて一言も言ってねー」
「て、てめールカワぁ
なに考えてやがる!!!」
「てめーに言う筋合いはねー」
「コノヤローッッ!!!
ふざけやがって」
激昂したサクラギが背中のアックスを振り上げると、初めてルカワが慌てた。
「待て、ここでは止めろ
部屋がめちゃめちゃになる」
「うるせー!!!」
「よし、わかった
呪いの解き方を教えてやる」
「な、なんだと?
てめー、やっぱり褒美を独り占めしようとしてやがったな
早く教えろっ」
サクラギが叫ぶ。
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