ボクの好きな人

[本編]





――



良く晴れた昼休みの屋上



僕の隣で静かな寝息を立てる黒髪の生徒。



恐らくこの学校で彼の事を知らない者はいない。



湘北バスケ部
1年10組 流川 楓



入部して間もない頃から、エースの座を欲しいままにする
スーパールーキー。



僕はつい先日この超有名人と友達になったばかりだ。



もっとも、そう思っているのはこっちだけかもしれないけど…



でも昼休み、こうして僕が傍にいるのを
何も言わずに受け容れてくれてるって事は
たぶん、そーゆぅ事なんだと都合良く解釈してる。



ほんとは未だに会話らしい会話はした事ないんだけどね。



それどころか、僕の名前すら訊こうともしないし…



まぁ、別にそんな事……
どうでもいいけど。



だって流川くんは、壊れ掛けてた僕を助けてくれたんだから!!



そして自分を作るのは自分なんだって教えてくれた…



あんな衝撃、生まれて初めてだった。



あれ以来、僕の心は流川くんでいっぱいになった。



無口でクールで何者にも媚びず、群れず、
だけどその強い精神力と内に秘めるバスケへの熱い思いが不思議と多くの人を惹き付ける。



僕もそんな流川くんに魅せられた1人なんだ。



今はこうして傍にいるだけで胸がいっぱいで舞い上がっちゃうけど
いつか自分も流川くんみたいになれたらいいなと思ってる。



あ、バスケじゃなくて生き方の方をね。



南西からの風にほんのり潮の香が混じる。



ここ湘北高校は結構海が近いんだ。



潮風はコンクリートに寝転ぶ流川くんの黒髪を揺らした。


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