ボクの好きな人


約束の日曜日が来た。



僕は言われた通りに駅前で赤木キャプテンを待っている。



キャプテンは他校の練習試合を観せると言っていたが
一体、僕に何を伝えようとしているんだろう…



何はともあれ、赤木キャプテンと二人きりで出掛けるという事が必要以上に僕を緊張させていた。



気持ちを落ち着けようと大きく息を吐き出し
自分のつま先をジッと見ていると急に影が差し、太陽の光が遮られた。



顔を上げると桜木くんと流川くん、
それに何故か三井先輩が僕を取り囲んでいる。



 「ど、どーしたのっ!?」



驚いて訊ねると桜木くんが大真面目な顔で答えた。



 「カイワレくんを助けに来た」

 「えぇ~???」



意味が解らず流川くんを見ると鋭い視線を向けて頷く。



 「まさか、赤木にそーゆぅ趣味があったとはなぁ」



三井先輩に至っては言葉の意味すら理解出来ない。



 「いいから早く行くぞ
 こんな所に居たらゴリに食われてしまう!!」



僕の右腕を桜木くんが持ち上げると同時に左から流川くんが脇を抱え、あっという間に足が地面から浮き上がった。



 「わわわっ!!
 ちょ、ちょっと待って」



抵抗すると、桜木くんが目に涙を溜めて訴える。



 「オレはカイワレくんがゴリのエサになる所など見たくないぞ!!」

 「……オレも、イヤだ」

 「まぁ、オレもいい気はしねぇな」



一体、この人達……



そう思った瞬間、更に高い位置から低い声が降って来た。



 「だぁ~~~れのエサだってぇ?」

 「「「 ぐわーーーっ!!!」」」



仁王立ちの赤木キャプテンが桜木くんと流川くんの頭に拳骨を振り下ろした。



 「このたわけ者がっ
 いい加減にせんかぁ!!
 三井まで一緒になって、何やってるんだ全く」



顔まで仁王様だ。



 「ち、ちげーよ赤木
 誤解だって!!
 オレは桜木が

 「てめーゴリっゴリラ!!
 カイワレくんは渡さねぇぞ」



三井先輩の言葉を遮って、桜木くんが赤木キャプテンに食らい付き、隣で流川くんがボキボキと指を鳴らす。



 「やれやれ…
 お前達が何をどう勘違いしているかは知らんが
 俺と甲斐原はこれから練習試合を見に行くんだ」

 「「 ウソだっ!!」」



桜木くんと流川くんがハモった。



 「嘘じゃねぇ
 これから行くのは海南大附属だ」

 「本当か、赤木!!」



三井先輩が反応した。



 「あぁ、本当だ
 お前達も一緒に行くか?
 海南大附属に勝てなきゃ、ウチの全国はねぇ」

 「ぬっ!?」

 「……っっ」

 「常勝海南、過去16年間インターハイ出場を逃した事はない…」

 「その通りだ、三井」



みんなの顔つきがガラリと変わった。



海南大附属高校……



そんな凄い学校の練習試合なんか観て、本当に僕にプラスになるんだろうか。



結局、僕達5人はそのまま電車に乗り目的地へ向かった。










海南大に到着すると、校門前で彩子さんと宮城先輩が待っていた。



 「あれ?ダンナ
 甲斐原だけって言ってませんでしたっけ?」



宮城先輩が後ろにくっ付いている3人を覗き込む。



 「偶然途中で会ったから一緒に連れて来た」

 「へぇ~、偶然ねぇ」



ニヤニヤする宮城先輩に桜木くんも負けてはいない。



 「リョーちんは、なんでここに居るんだ」

 「オレ?オレはそりゃ決まってんだろぉ
 アヤちゃんのボディガード
 ……ガードだけに?
 な~~んてなっ」



一瞬、みんな笑っていいのか戸惑う。



途端に宮城先輩は彩子さんにハリセンで叩かれた。



 「さぁ、みんな行くわよ
 常勝・海南大のプレイをしっかり観て来ましょう!!」



元気な彩子さんを先頭に
僕達はゾロゾロと校内へ入って行った。



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