今日は厄日だ

「…安西先生も言ってただろう、諦めたらそこで試合終了だと」



腕組みをした赤木が項垂れている長谷川に言葉をかけると、長谷川はゆっくりと顔を上げた。



「――そうですよ、まだ勝負はついてもいませんし」



「神……」



「三井さんはニブそうですから、もう少しダイレクトなパスを放らないと分からないかもしれませんね」



「仙道……」




長谷川は「自分を応援してくれている人がこんなにもいる」と感動して微かに震えていたが、3人の本心は『自分自身の萌え供給のための駒を動かしたい』この一点だけだった。




「……そうか、俺がフリーになった三井にパスを渡し、それを受け取った三井が3ポイントシュートを打つ、そういう図式だな!!」



「「そういうことですね」」




ゆっくりと頷いた赤木に、返事を返す神と仙道。2年生組の長谷川に対する言葉はもはや適当だ。長谷川をやる気にさせて、その様子を傍から覗くことができればそれで十分だからだ。




「……じゃあ俺はどうアクションを起こせばいい?」




再びやる気に満ち溢れてきた長谷川の相談に、3人は少しばかり沈黙した後、神が口を開いた。




「――そうですね、長谷川さんが好意を持っていると分からせる意味でも、言葉に表した方がいいんじゃないですかね」



「こっ…告るってことか!?」



「ちょっと匂わすくらいでもいいと思いますよ」




神と仙道の言葉に、長谷川の発汗と紅潮が止まらない。




「お、俺は、み、三井が……す、す、す、きだ…」



「「「……」」」




小声で練習している長谷川を見つめている赤木、神、仙道は、心の中でバッタバッタとのたうち回っていた。
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