今日は厄日だ

俺の目的は三井のみ!!
木暮なんぞでは話にならん!!


打ち震える長谷川の視線の先には三井しか映っていなかった。
安西監督がくれたこのチャンス、みすみす逃すわけにはいかないのだ。



(なんとしても三井を引きずり出さなければ…)

 
考える長谷川だが先程の叫びが思っていた以上に自分にダメージを与えていた。


本来自分は「自分」を表に出すのが苦手だ。
そんな自分が思いの丈をぶつけたのだ。
ましてやこの興奮状態。
頭が真っ白になっても仕方が無い。
すると長谷川の叫びに打ち震えた人物がここで動いた。



「湘北からはお前が出ろ、三井」



赤木だ。



(赤木!!!)



思わぬ伏兵に長谷川の熱は高まった。



「あぁ?なんで俺が」


「いいからお前が出るんだ」



くい気味に煽る赤木の三井に向けられた目は凄まじく熱い。



「なんだよ、その目は…俺は嫌だぞ!野球拳なんて…」


「なんだ三井、まさか自信がないのか?安西先生が提案したものに対して自信がないなどと…炎の男三井も地に落ちたものだな」


「かっ関係ねーだろうが!!」


「三井、なんもわかっとらんな。安西先生が提案したんだぞ?ここでお前が活躍すれば安西先生がどう思うかわからんのか?」


「!!!!」

(そうだ、なぜ気づかなかった三井寿!これは安西先生にアピールするチャンス!)



そう、この野球拳は尊敬する安西先生が自ら出したもの。
その野球拳に参加拒否などとはもっての外なのだ。
参加拒否することは安西先生の企画を拒否したのも同然。
その企画を拒否することは安西先生をも否定するのも同然!!
そのようなことは絶対に絶対に許されないのだ。


既に身構えている長谷川を見ると抑えきれない闘志で燃え上がっている。



「ヤロウ…」



やる気満々の長谷川を前にして引き下がる訳にはいかない。
そう!俺は炎の男!!



「受けて立とうじゃねーか…」



三井の目がギラリと光った。

と同時に三人の目がギラッと光った。

(((三井参戦きた!!!!!)))

共通の言葉を小さくガッツポーズしながら心の中で叫んだ三人は皆さんお察しの通り。

ガタリと席に着く赤木の横でナイスとウインクすを送る仙道。
それを見てフッと微笑む赤木。



(赤木…仙道…お前ら、まさか…)



二人の言葉ないコンタクトを見て長谷川は全てを察した。
お前らも「同志」だと。



(赤木、お前まさかお膳立てしたというのか!)


(皆まで言うな。存分にやれ長谷川!)


(期待してますよ、長谷川さん)



目と目で会話。



男たちはわかりあったのだ。

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