今日は厄日だ


強風に煽られて小窓から雨が流れ込んでくるのを、窓を閉めることでなんとか解決した藤真



雨粒がガラスに当たって、今にも割れてしまいそうだ



便座に蓋をして、その上に腰掛けている藤真は腕組みポーズで記憶を辿っている




アイツ……どっかで見たな……




翔陽とて全国常連チームだ

いつかの大会で、あの顔を見たことがあるようなないような……



手を顎に当てて考える




どっかのチームの………
あ……静岡の?

確か名前はっ………
なんだっけな………えーと…………柴
………

そうだ、柴がついたはず

柴………
柴柴柴…………み…………



わかんないから柴犬(仮)にしておこう




そんな奴がどうして神奈川のこんな喫茶店に?


しかもあいつ、雨の中なにやってんだ




沢山の疑問が頭の中をぐるぐると回っている



しかしいくら考えても答えは出ず、すっかり長居したトイレを後にしようと立ち上がった時、藤真の脳裏に最悪の答えが浮かび上がった




立ち上がった足がわずかに震える



鼓動はスピードを上げて、藤真の呼吸を荒くした




まさか……そんなはずはない



だがしかし、そう考えると全てのつじつまは合う



こんな激しい雨の中、雨粒に打たれる意味はそれしかない


多分あの顔は泣いていた


そりゃ泣きたくもなるだろう

そうだ、あいつは………







「漏らしたんだ……!」




ここに入った時の強烈な臭い!

あいつが処理した後に違いない!


そして全てを水に流そうと外に出たんだ!!


なんて汚い!

ましてや飲食店でそれをするなどあり得ない!




怒りに任せて再び小窓を開けると、雨音よりも大きい声で藤真は叫んだ




「汚物野郎が………このっ………おぶ柴がぁああああ!!!入ってくんな!クソが!!」

ピシャンッ!




突然のおぶ柴呼びに何事かとわけが分からず喫茶店の中に戻ろうとした御子柴だったが、入り口を藤真に固く閉じられて、痛いくらい雨を浴びるしかなかった

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