今日は厄日だ

「う~ん、参ったなぁ」

雨でビッショリになった傘を畳めば足元のコンクリートに傘の雨水で小さな水溜りが一瞬で出来た。

足元はずぶ濡れになったが、傘は壊れなかったので全身ずぶ濡れは避けることが出来た。

今日は台風が来るというから早く帰ろうと(一緒に帰ろうとせがむ清田を笑顔で振り切って)急いで学校を出たというのに。

目の前に叩きつけられたのは駅員が急いで書いたと思われる「運転見合わせ」の張り紙。

張り紙の横では駅員が忙しそうに集まる人に向かって説明をしている。

「ふう…」

こんなことならもう少しゆっくりくればよかったかな…、と反省ながらも駅に向かう途中強くなっていた風雨を思うと、やっぱり清田を振り切って駅に急いだ自分の行動は間違いではなかったと自問自答する。

外ではバスやタクシーを使って家路に着こうとする人の行列が出来ていた。

できれば自分もそうしたかったが、バスは自分の家に向かう路線はないし、タクシーは高校生の身分では持ち合わせがない。

家まで乗り付けて家の人に払ってもらう手も考えたが、流石に申し訳ないと思ったし、この豪雨の中長蛇の列に並ぶ気力もなかった。

(更に濡れたら嫌だしね)

無駄なことはしたくない神は一切の無駄な行動を排除し、次の行動に移そうと考えた。

このまま改札口に立っていても人ごみにまみれて疲れてしまうので、どこか休める場所に入って時間をやり過ごそうと思った。

幸い、この駅は比較的大きな駅なので喫茶店やファーストフードショップが軒を連ねている。

きっとどこかひと席くらいは空いているだろう。

そう思って畳んだ傘をしっかりと留め、歩きだそうとした所でポンと肩を叩かれた。

反射的に振り返ると、そこには見知った顔が後ろに立っていた。

「あ!!」

こんな所で会うなんて珍しいな、と思いながら神はにっこりと微笑みながら会釈した。
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