今日は厄日だ

入店してきたのは恰幅のよい老紳士。



ぐっしょり濡れた髪と衣服からボタボタと雨露が垂れる。



迎え出た店員に床を汚した事を詫びると、彼は賑わう客席へと目をやった。

そこには見覚えのある面子ばかり…
一瞬目を丸くしたがすぐさま表情を和らげ、集団に声をかけた。




「どうしたんですか?勢揃いで…
皆も雨宿りですか?ほっほっほ」



「「「あっ…安西先生ぇぇえ!?(;゚Д゚)」」」




まさかまさかの湘北御神体登場に一同大絶叫。



固まる他校軍団をよそに湘北勢(二名)が俄然活きづく。




「「ちゅーーーーっす!!(≧3≦)(≧3≦)」」



「ちょっ…体育館じゃないんだから…(;´Д`)アワワ」




メガネ君が本日三度目の注意をするも軽くシカト…
赤木と三井にとって、木暮は最早ステルスなのかもしれない。




「ほっほっほ、元気が良いですね。いやいや、しかしすごい雨だった…」




そう言ってポケットからハンカチを取り出し、雨露を拭おうとする安西氏。

しかしハンカチ自体がビショビショ…
白い眉が困ったように下がる。

その様子を安西先生信者のミッチーは見逃さなかった。




「オラッ!そこの店員!!ボサッとしてねぇでさっさとタオルをお出ししろ!
先生が風邪ひぃたらどぉーしてくれんだっ!!」




元ヤン特有の理不尽さと圧力で指示一発。

店員は慌ててタオルを用意し、びしょ濡れ太っちょ紳士に差し出した。




「バカ!んなちっちぇータオルで足りるか!!もっとデカイの持ってこい!!
大判バスタオルとかねぇのかよ!?」




思慕が強すぎて逆に失礼になっちゃってるミッチー。

これしかないんです…と半ベソ状態の店員に舌打ち&メンチを切って、
奪うようにタオルを受け取った。




「先生、汚いタオルで申し訳ないんですが取り敢えずこれで…
あ!今、温かいコーヒーでも淹れさせますんで!!
おらっ店員!!とっとと動け!!!カーッ(`Д´)=3」




慕い敬う気持ちもここまでくると正直気持ち悪い。

その一部始終を見ていた長谷川一志…
彼の胸中は複雑だった。




(…三井…まさかお前が年上好きだったとは…
しかもデブ専…)




想いを寄せる相手の特殊すぎる性癖…ゲフフンッ!…好みに、
さすがの能面ボーイも動揺を隠せない。

噛みしめた下唇からじんわりと血が滲む。


今ここに『長谷川→三井→安西先生』のニュートライアングルが完成。

一体ダレ得やねん!と関西人ならずとも突っ込みを入れたいトコだが、
確実に得をしてる人物がいた。




(ちょっ…何このミラクル!!すげぇご馳走シチュなんだけどっ…
あぁ、早く越野にこのウキウキを語りたいっ!!(*´Д`)=3ハスハスハス)




腐男子 仙道、イレギュラー老紳士登場に萌え狂う…


収拾不可能になりつつある状況の中、
カウンター奥で傍観を決め込んでいた店長は思った。




(なぁんか…無性にケン○ッキー食いたくなってきたな…)


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