湘北☆cop
《case file 9》
腰越陵南署と合同の要人警護がいよいよ今週末に迫っている。
警護課からの正式な要請で捜査一課からは赤木剛憲と新人の2人がその任に就くこととなった。
「どっかのゴリラと違って、さすがはオヤジ!部下を見る目があるぜ!ナーハッハッハッハ」
晴れて内勤の命を解かれた桜木は上機嫌で安西のふくよかなアゴ肉を連打する。
「調子に乗るなっ!
このたわけがっ!!」
途端に赤木の拳が桜木の頭上に落ちた。
「課長、ホント〜〜にこんな奴で宜しいのですか?」
「ほーっほっほっほ
頼みましたよ、赤木くん」
「は、はぁ……」
苦渋の表情で自席に戻る赤木を見て、三井と宮城は心中「ご愁傷様」と手を合わせた。
そして今まさに、その事前打ち合わせが片瀬湘北署の会議室で行われようとしている。
桜木と流川は到着した陵南署員らが入室して来るのをソワソワしながら目で追っていた。
「センドーはオレが倒す」
桜木が小声で呟く。
「いや、オレだ」
直ぐに流川が返した。
「黙れキツネ
このオレだっ」
「オレだ」
不毛な意地の張り合い。
「てめぇじゃ役不足だ
すっこんでろ」
流川が涼しい顔で挑発すると
「んだとコラァ!!」
まんまとそれに乗っかった桜木が声を張り上げ
「いい加減にせんかっ!!」
またしても赤木の拳が桜木の頭上に落ちた。
「クソぉ〜、何でオレだけ」
頭を抱えて桜木が睨み付けると流川は「知るか」とソッポを向く。
これでは本当に先が思いやられる……
額に手を当てる赤木の脇を一人の中年男性が通り過ぎた。
「お久しぶりです、安西課長!」
彼の名は田岡茂一、腰越陵南署捜査一課課長だ。田岡は安西の真正面に立つと最敬礼をして彼への敬意を示す。
「やぁ、田岡課長
元気そうで何よりです」
「はい!安西課長もお変わり無いご様子で安心致しました!」
やたら緊張しまくる陵南捜査一課長。
その様子を見ながら桜木は「ひょっとしてウチのオヤジってエライのか?」とちょっと感心する。
「湘北署の主任、赤木です
ヨロシクお願いします!!」
今度は赤木が田岡に敬礼した。
「おう、赤木くんか
ウチの魚住も今回の任務に当たらせている
ヨロシク頼むよ」
その背中では魚住が安西に挨拶している。
「ゴリさんよりデカいとは!」
魚住の巨漢っぷりに興奮した桜木が思わず声に出した。ますます陵南署への闘志が湧いて来る。流川も内心「でけー」と目を見張った。
続いて主任同士が対峙する。
「ヨロシク」と右手を差し出した赤木に対して、敵意剥き出しでそれをスルーする魚住。去り際に「オレが勝つ」と言い残して自席に着いた。
「生意気な…」
不敵に笑う赤木。二人には人知れず深い因縁があるようだ。
「桜木さん!流川さん!
先日は大変お世話になりましてん!」
走り寄って来たのは相田彦一だ。
「何でお前がここに居んだ?」
首を傾げる桜木。
「僭越ながら、わいも今回の要人警護の任務に当たらせて頂きます」
「???」
「はぁ……
てめぇホントに刑事か?」
呆れた流川が横から口を出す。
「あ"ぁ?んだとぉ」
「コイツ、陵南の刑事」
親指で彦一を指す流川。
「・・・はぁーーっっ?!」
「あれ?言うてまへんでした?
わいの勤務先は腰越陵南署捜査一課でっせ?」
それを聞いて桜木はもう一度声を上げる。
「じゃ、じゃあテメェは
センドーの仲間だったのか?」
「な、仲間やなんて!
烏滸がましい事ですわ・・・って
く、くるしぃ」
桜木がいきなり彦一の首を絞め上げた。
「クソォ、この天才を騙してウチの情報を盗みやがったな!」
「ま、待ってください
濡れ衣ですわぁ」
「気付かずベラベラ喋ったテメェが悪い」
流川が煽る様な事を言うので彦一は更に吊り上げれられて目を白黒させる。
その桜木の腕をグィと掴んだ者がいた。
「……ヤメておけ」
「あ"ぁ??
誰だテメェは」
「オレの方が先輩だ
敬語で話せ…」
「はぁ〜??
なんだテメェ」
桜木の興味が移り、彦一は漸く開放される。
「ゲホッゲホッゲホッ……
ふ、福さんおおきに、助かりました」
そう、彦一が「福さん」と呼んだこの男こそ、命令無視で被疑者に単独で接触し取り逃がすという大失態をやらかし、つい先日まで謹慎処分を受けていた陵南署捜査一課、福田吉兆その人だった。
「福さん?
チッ、テメェ何ぞフク助でたくさんだ」
「敬語を使え」
どこまでも無表情の福田だが、圧が凄い。
二人に挟まれた彦一はオロオロするばかり。流川はとっくに席を移していた。
あわや一触即発!!
張り詰める中、警護課の担当者から打ち合わせ開始の声が掛かり、とりあえずその場は事なきを得る。
福田の態度に憤慨する桜木はすっかり忘れているようだが、流川はこの場に仙道が来なかった事にかなり落胆していた。もう殆どヤル気が失せている。ウッツラウッツラと船を漕ぎ出したところに会議室のドアが開いた。
「わりィ」
汗だくでネクタイを緩める男に部屋中の視線が集まる。
「コラァーーッ
この馬鹿者!!!
今までいったい何をしとったんじゃあ、仙道!!!」
田岡が大慌てで彼に駆け寄る。
「すいません、課長
寝坊です」
悪びれた様子は1ミリもなく、どこまでも爽やかだ。
「おせーぞ、センドー!」
「…………」
遂に二人の前に現れた宿敵、仙道彰!
波乱の予感しか無い!!
.
腰越陵南署と合同の要人警護がいよいよ今週末に迫っている。
警護課からの正式な要請で捜査一課からは赤木剛憲と新人の2人がその任に就くこととなった。
「どっかのゴリラと違って、さすがはオヤジ!部下を見る目があるぜ!ナーハッハッハッハ」
晴れて内勤の命を解かれた桜木は上機嫌で安西のふくよかなアゴ肉を連打する。
「調子に乗るなっ!
このたわけがっ!!」
途端に赤木の拳が桜木の頭上に落ちた。
「課長、ホント〜〜にこんな奴で宜しいのですか?」
「ほーっほっほっほ
頼みましたよ、赤木くん」
「は、はぁ……」
苦渋の表情で自席に戻る赤木を見て、三井と宮城は心中「ご愁傷様」と手を合わせた。
そして今まさに、その事前打ち合わせが片瀬湘北署の会議室で行われようとしている。
桜木と流川は到着した陵南署員らが入室して来るのをソワソワしながら目で追っていた。
「センドーはオレが倒す」
桜木が小声で呟く。
「いや、オレだ」
直ぐに流川が返した。
「黙れキツネ
このオレだっ」
「オレだ」
不毛な意地の張り合い。
「てめぇじゃ役不足だ
すっこんでろ」
流川が涼しい顔で挑発すると
「んだとコラァ!!」
まんまとそれに乗っかった桜木が声を張り上げ
「いい加減にせんかっ!!」
またしても赤木の拳が桜木の頭上に落ちた。
「クソぉ〜、何でオレだけ」
頭を抱えて桜木が睨み付けると流川は「知るか」とソッポを向く。
これでは本当に先が思いやられる……
額に手を当てる赤木の脇を一人の中年男性が通り過ぎた。
「お久しぶりです、安西課長!」
彼の名は田岡茂一、腰越陵南署捜査一課課長だ。田岡は安西の真正面に立つと最敬礼をして彼への敬意を示す。
「やぁ、田岡課長
元気そうで何よりです」
「はい!安西課長もお変わり無いご様子で安心致しました!」
やたら緊張しまくる陵南捜査一課長。
その様子を見ながら桜木は「ひょっとしてウチのオヤジってエライのか?」とちょっと感心する。
「湘北署の主任、赤木です
ヨロシクお願いします!!」
今度は赤木が田岡に敬礼した。
「おう、赤木くんか
ウチの魚住も今回の任務に当たらせている
ヨロシク頼むよ」
その背中では魚住が安西に挨拶している。
「ゴリさんよりデカいとは!」
魚住の巨漢っぷりに興奮した桜木が思わず声に出した。ますます陵南署への闘志が湧いて来る。流川も内心「でけー」と目を見張った。
続いて主任同士が対峙する。
「ヨロシク」と右手を差し出した赤木に対して、敵意剥き出しでそれをスルーする魚住。去り際に「オレが勝つ」と言い残して自席に着いた。
「生意気な…」
不敵に笑う赤木。二人には人知れず深い因縁があるようだ。
「桜木さん!流川さん!
先日は大変お世話になりましてん!」
走り寄って来たのは相田彦一だ。
「何でお前がここに居んだ?」
首を傾げる桜木。
「僭越ながら、わいも今回の要人警護の任務に当たらせて頂きます」
「???」
「はぁ……
てめぇホントに刑事か?」
呆れた流川が横から口を出す。
「あ"ぁ?んだとぉ」
「コイツ、陵南の刑事」
親指で彦一を指す流川。
「・・・はぁーーっっ?!」
「あれ?言うてまへんでした?
わいの勤務先は腰越陵南署捜査一課でっせ?」
それを聞いて桜木はもう一度声を上げる。
「じゃ、じゃあテメェは
センドーの仲間だったのか?」
「な、仲間やなんて!
烏滸がましい事ですわ・・・って
く、くるしぃ」
桜木がいきなり彦一の首を絞め上げた。
「クソォ、この天才を騙してウチの情報を盗みやがったな!」
「ま、待ってください
濡れ衣ですわぁ」
「気付かずベラベラ喋ったテメェが悪い」
流川が煽る様な事を言うので彦一は更に吊り上げれられて目を白黒させる。
その桜木の腕をグィと掴んだ者がいた。
「……ヤメておけ」
「あ"ぁ??
誰だテメェは」
「オレの方が先輩だ
敬語で話せ…」
「はぁ〜??
なんだテメェ」
桜木の興味が移り、彦一は漸く開放される。
「ゲホッゲホッゲホッ……
ふ、福さんおおきに、助かりました」
そう、彦一が「福さん」と呼んだこの男こそ、命令無視で被疑者に単独で接触し取り逃がすという大失態をやらかし、つい先日まで謹慎処分を受けていた陵南署捜査一課、福田吉兆その人だった。
「福さん?
チッ、テメェ何ぞフク助でたくさんだ」
「敬語を使え」
どこまでも無表情の福田だが、圧が凄い。
二人に挟まれた彦一はオロオロするばかり。流川はとっくに席を移していた。
あわや一触即発!!
張り詰める中、警護課の担当者から打ち合わせ開始の声が掛かり、とりあえずその場は事なきを得る。
福田の態度に憤慨する桜木はすっかり忘れているようだが、流川はこの場に仙道が来なかった事にかなり落胆していた。もう殆どヤル気が失せている。ウッツラウッツラと船を漕ぎ出したところに会議室のドアが開いた。
「わりィ」
汗だくでネクタイを緩める男に部屋中の視線が集まる。
「コラァーーッ
この馬鹿者!!!
今までいったい何をしとったんじゃあ、仙道!!!」
田岡が大慌てで彼に駆け寄る。
「すいません、課長
寝坊です」
悪びれた様子は1ミリもなく、どこまでも爽やかだ。
「おせーぞ、センドー!」
「…………」
遂に二人の前に現れた宿敵、仙道彰!
波乱の予感しか無い!!
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