湘北☆cop
《case file 4》
鎌倉市の西側に位置する
腰越陵南署。
やはり目の前には相模湾が広がり署内は常に潮の香りが漂っている。
その三階にある捜査一課に怒声が響き渡った。
「仙道はどうしたっ!!
またサボっとるのか!!」
声の主は一課の課長、田岡茂一。
その前でうなだれ、目を閉じているのは巨漢の主任、魚住純だ。
「すみません
すぐに連れて来ます」
そして振り向き様に叫ぶ。
「越野っ!!」
「えぇ!??
また俺っすかぁ~
たまには植草とかでも
「ダメだっ!!
仙道はお前の言う事しか聞かんからな
さっさと捜して来い!!」
名指しされ、越野宏明は
げんなりした顔で席を立った。
「いつも悪いな」
隣で植草が拝んでいる。
「ハァ~~」
全く手の掛かる同僚である。
昼行灯…
仙道にはそんなあだ名がついていた。
およそ緊張感に欠ける、ちょっぴり不思議ちゃんな彼だが、ひとたび事件が起きるとその隠された能力を発揮し、天才的な閃きでスピード解決してしまうのだ。
仙道の活躍で腰越陵南署は度々表彰されて来た。
そういうわけで、
サボり常習の彼に面と向かっては怒鳴れない田岡は
代わりに魚住を怒鳴り、怒鳴られた魚住は越野を怒鳴るのがこの課の常であった。
田岡は腕組みしたまま椅子をグルリと回転させ、デスクに背を向ける。
「ところで魚住…
ヤツの…、福田の謹慎が解けるのはいつだ」
ブラインドの上がった窓から見える水平線に田岡は目を細めた。
「あと1週間かと…」
「んん~…
今回の山にヤツは不可欠だからな」
苦虫を噛み潰したようなその表情に後悔の念が滲む。
一課の刑事、福田吉兆は
前回の事件で命令を無視し被疑者に単独で接触した上、取り逃がすという大失態をやらかした。
幸い、仲間の迅速なフォローで事無きを得たが
その責任を田岡に激しく追及されブチ切れした福田は、ついに彼に手を上げてしまったのだ。
「課長、ケガの方はもうよろしいのですか?」
「……まぁな
あの件は俺の対応もまずかった
福田を追い込み過ぎた」
僅かに苦笑すると、田岡は殴られた左の頬を擦った。
一方越野は、海沿いの遊歩道をのんびりと歩くツンツン頭を見つけて駆け寄っていた。
「ここに居たのかよ
捜したぜぇ」
「やぁ、越野ぉ」
呑気に手を振る仙道。
「やぁ越野ぉ、じゃねぇ
どこでサボってやがったんだ!!課長がお呼びだぞ」
近づき、仙道の耳元でわざと声を張り上げた。
「へぇ~、なんだろ?
って聞こえるよそんな近くで言わなくても」
「しらねぇよ、ったく…」
「あれ?ご機嫌ななめ?」
つっけんどんな越野に仙道は笑顔を向ける。
「そんな事より越野!!
これからちょっと面白くなりそーだよ?」
「はぁ?」
「さっき、久しぶりに湘北署を覗いて来たんだけどさぁ」
「の、覗いて来たって
お前…」
呆れる越野に、仙道は構わず話を続ける。
「鑑識の女の子を御飯に誘ってたらさぁ
なぁ~んか見掛けないヤツがいるんで訊いたら
そいつ なんと!!
捜査一課の新人クンだったんだよねぇ」
「仙道…
勤務中に他の署の女の子口説きに行くの止めろって言ったよな?」
「そしたら、その新人クンが俺にガン飛ばして来たわけよ!!」
「オィィィィィ!!
人の話を聞けっ」
But, Don't stop 仙道クン←
「マジでそん時、背中がゾワッてなったんだよね
コイツは近い将来、必ず俺らの前に立ちはだかる男だって!!ピンと来た♪」
「ハァ~~」
越野は目を閉じてため息をひとつ吐く。
とりあえず今やるべきは与えられた任務の遂行だろう。
宏明、冷静になれ!!と自分に言い聞かせる。
「なぁ仙道
続きは署に戻ってから
「あっそうだ!!
アイツの名前訊いときゃ良かったなぁ
いやぁ失敗したぁ~~」
ダメだこりゃ…
大袈裟に嘆く仙道を見て、実力行使に出るしかないと悟る越野。
「そうか、
そりゃ残念だったな
お前には心から同情するぞ、でも今は署に帰ろう
そんで、湘北の話は課長にするなよ?いいなっ」
彼の腕をガッチリと掴み、強引に歩き出す。
「えぇーっ!??
どーしてぇ?
ビッグニュースでしょコレ」
「いいからっ
俺の言う通りにしろ!!!」
「ドキッ!!
何で?…越野こわいよ」
「当たり前だっ
俺の身にもなれ!!」
「・・・はい」
シュンとする仙道を引っ張って、一路陵南署を目指す越野。
少し歩くと仙道がモジモジし始める。
「…ねぇねぇ
越野くん~?」
「な、なんだよ…」
仙道、さすがに俺だってこの状況は恥ずかしんだぞっ
お前と腕を組んで歩くなんて…
モノローグ越野の頬は、ほんのりと赤い。
「あのさぁ…
でも、魚住さんならいいよね?この話しても」
「・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
知るかーーっっ!!!」
もういい加減コイツのお守りは勘弁してほしい…と真剣に思う越野だった。
.
鎌倉市の西側に位置する
腰越陵南署。
やはり目の前には相模湾が広がり署内は常に潮の香りが漂っている。
その三階にある捜査一課に怒声が響き渡った。
「仙道はどうしたっ!!
またサボっとるのか!!」
声の主は一課の課長、田岡茂一。
その前でうなだれ、目を閉じているのは巨漢の主任、魚住純だ。
「すみません
すぐに連れて来ます」
そして振り向き様に叫ぶ。
「越野っ!!」
「えぇ!??
また俺っすかぁ~
たまには植草とかでも
「ダメだっ!!
仙道はお前の言う事しか聞かんからな
さっさと捜して来い!!」
名指しされ、越野宏明は
げんなりした顔で席を立った。
「いつも悪いな」
隣で植草が拝んでいる。
「ハァ~~」
全く手の掛かる同僚である。
昼行灯…
仙道にはそんなあだ名がついていた。
およそ緊張感に欠ける、ちょっぴり不思議ちゃんな彼だが、ひとたび事件が起きるとその隠された能力を発揮し、天才的な閃きでスピード解決してしまうのだ。
仙道の活躍で腰越陵南署は度々表彰されて来た。
そういうわけで、
サボり常習の彼に面と向かっては怒鳴れない田岡は
代わりに魚住を怒鳴り、怒鳴られた魚住は越野を怒鳴るのがこの課の常であった。
田岡は腕組みしたまま椅子をグルリと回転させ、デスクに背を向ける。
「ところで魚住…
ヤツの…、福田の謹慎が解けるのはいつだ」
ブラインドの上がった窓から見える水平線に田岡は目を細めた。
「あと1週間かと…」
「んん~…
今回の山にヤツは不可欠だからな」
苦虫を噛み潰したようなその表情に後悔の念が滲む。
一課の刑事、福田吉兆は
前回の事件で命令を無視し被疑者に単独で接触した上、取り逃がすという大失態をやらかした。
幸い、仲間の迅速なフォローで事無きを得たが
その責任を田岡に激しく追及されブチ切れした福田は、ついに彼に手を上げてしまったのだ。
「課長、ケガの方はもうよろしいのですか?」
「……まぁな
あの件は俺の対応もまずかった
福田を追い込み過ぎた」
僅かに苦笑すると、田岡は殴られた左の頬を擦った。
一方越野は、海沿いの遊歩道をのんびりと歩くツンツン頭を見つけて駆け寄っていた。
「ここに居たのかよ
捜したぜぇ」
「やぁ、越野ぉ」
呑気に手を振る仙道。
「やぁ越野ぉ、じゃねぇ
どこでサボってやがったんだ!!課長がお呼びだぞ」
近づき、仙道の耳元でわざと声を張り上げた。
「へぇ~、なんだろ?
って聞こえるよそんな近くで言わなくても」
「しらねぇよ、ったく…」
「あれ?ご機嫌ななめ?」
つっけんどんな越野に仙道は笑顔を向ける。
「そんな事より越野!!
これからちょっと面白くなりそーだよ?」
「はぁ?」
「さっき、久しぶりに湘北署を覗いて来たんだけどさぁ」
「の、覗いて来たって
お前…」
呆れる越野に、仙道は構わず話を続ける。
「鑑識の女の子を御飯に誘ってたらさぁ
なぁ~んか見掛けないヤツがいるんで訊いたら
そいつ なんと!!
捜査一課の新人クンだったんだよねぇ」
「仙道…
勤務中に他の署の女の子口説きに行くの止めろって言ったよな?」
「そしたら、その新人クンが俺にガン飛ばして来たわけよ!!」
「オィィィィィ!!
人の話を聞けっ」
But, Don't stop 仙道クン←
「マジでそん時、背中がゾワッてなったんだよね
コイツは近い将来、必ず俺らの前に立ちはだかる男だって!!ピンと来た♪」
「ハァ~~」
越野は目を閉じてため息をひとつ吐く。
とりあえず今やるべきは与えられた任務の遂行だろう。
宏明、冷静になれ!!と自分に言い聞かせる。
「なぁ仙道
続きは署に戻ってから
「あっそうだ!!
アイツの名前訊いときゃ良かったなぁ
いやぁ失敗したぁ~~」
ダメだこりゃ…
大袈裟に嘆く仙道を見て、実力行使に出るしかないと悟る越野。
「そうか、
そりゃ残念だったな
お前には心から同情するぞ、でも今は署に帰ろう
そんで、湘北の話は課長にするなよ?いいなっ」
彼の腕をガッチリと掴み、強引に歩き出す。
「えぇーっ!??
どーしてぇ?
ビッグニュースでしょコレ」
「いいからっ
俺の言う通りにしろ!!!」
「ドキッ!!
何で?…越野こわいよ」
「当たり前だっ
俺の身にもなれ!!」
「・・・はい」
シュンとする仙道を引っ張って、一路陵南署を目指す越野。
少し歩くと仙道がモジモジし始める。
「…ねぇねぇ
越野くん~?」
「な、なんだよ…」
仙道、さすがに俺だってこの状況は恥ずかしんだぞっ
お前と腕を組んで歩くなんて…
モノローグ越野の頬は、ほんのりと赤い。
「あのさぁ…
でも、魚住さんならいいよね?この話しても」
「・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
知るかーーっっ!!!」
もういい加減コイツのお守りは勘弁してほしい…と真剣に思う越野だった。
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