あれから17年後


再び暗くなる会場。

静かに流れ出した曲と共に
キャンドルサービスが始まる。

和装とは打って変わり
ライトが当たった彩子が纏うのは大胆なデザインの真っ赤なドレス。

巻き上げた長い髪、艶っぽいうなじ、たわわな胸と括れたウエスト…

桜木軍団が一斉にヒューッと指笛を鳴らす。

白いタキシードの宮城が完全に添え物になった。

招待客の祝福を浴び、テーブル1つ1つを巡って行く。

火が灯る度、笑顔の2人が暗がりに浮かび上がる。

最後に高砂の横の一番大きなキャンドルに着火すると盛大な拍手が巻き起こった。

拍手が鳴り止み、新郎新婦が席に着くと
来賓の祝辞と余興へと続く。

途中、ビデオ上映があり
その中には懐かしい湘北時代の練習風景も入っていた。

コートの端で基礎練習する桜木とハリセンを振り上げる彩子。

木暮のディフェンスを振り切ってレイアップを決める宮城。

三井が打った3Pシュートは綺麗にリングに吸い込まれ
流川のジャンプシュートを赤木が豪快に叩き落とす。

みんな、若かった。

最後のイベントである花束贈呈が済むと司会者から

 「ここで新婦よりご来賓の皆様に御礼の言葉がございます」

と案内があった。

 「え?なに、アヤちゃん」

宮城にとってもサプライズのようだ。

彩子はパチンと宮城にウインクすると、前へ出て一礼した。

 「本日はリョータと私の結婚披露宴にご出席頂き、
 本当に有難うございました

 欠席者0で今日の日が迎えられて心から感謝してます

 リョータの気持ちはずいぶん前から知ってたけど、気付かない振りして彼に辛い思いをたくさんさせちゃいました

 だから本当なら私なんてとっくに愛想尽かされちゃうはずなのにリョータはずっと待っててくれた…

 どうしてだろうって考えて、私わかったんです

 それは今日、この場にいらっしゃる皆さんのおかげだって…

 皆さんと一緒に過ごした日々が、記憶の一つ一つが
 気付かないうちに私達2人の絆を太く、確かなものにしてくれていたんだなって

 皆さんと出会えて、一緒の時間を過ごせて本当に良かったです

 有難うございました

 今日、これが言いたくて皆さんをお招きしちゃいました

 ごめんなさいっ」

彩子がペコリと頭を下げるとどこからともなく拍手が起こり、やがて会場中が大喝采になった。


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