あれから17年後
隣の円卓では先程から晴子が流川をチラ見していた。
その晴子を桜木がチラ見してハラハライライラしている。
「あ、あの……
る、流か
「ハ、ハルコさんっ!!!
そのキツネ男はすでに妻帯者で、しかも海の向こうには2人も子供がいるんですっ!!
騙されちゃいけませんよっ!!」
桜木が慌てて遮った。
「し、知ってるわよ
そんなこと……でも、
久しぶりに会ったんだから話くらいさせて
ね?桜木くん」
「し、しかし…あの野郎はハルコさんの
「大丈夫だよ」
「ハルコさん…」
晴子は再び流川の方に向き直ると「元気だった?」と声を掛けた。
「……あぁ」
「あの、…す、すごかったね この半年
テレビや雑誌でずっと見てたよ
Mr.フェニックス…
やっぱり流川くんは何年経っても何処にいても流川くんなんだなって思った」
「……どうも」
伏し目がちで軽く会釈する流川。
その長い睫毛は恋してた頃と寸分変わらない。
晴子の瞳が見る見るハートに変わって行く。
「ハルコさん?
…ハルコさんっ!?
ちょっとハルコさん!!!」
慌てふためく桜木。
その様子を一部始終見ていた石井、佐々岡、桑田が同時に吹き出した。
当然、桜木のイライラの矛先は彼らに向かう。
そんな桜木を横目に晴子は話を続けた。
「日本には、戻って来ないの?」
「……まだ、考えてねー」
「そう…」
微妙な沈黙の後、流川が初めて晴子の方を見る。
「え?」
「どあほうのこと
………よろしく」
「…………………
あ、…あぁ
うん、任せて!!」
晴子の瞳のハートは消え去った。
もう二度と揺れる事はないだろう。
そして円卓の陰では桜木の頭突きを受けた3人が呻いていた。
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