あれから17年後
「カメラをお持ちの方は前にお進みになって撮影して下さい」
司会者が勧めると、大勢の客がゾロゾロと前方へ移動した。
ウェディングケーキ入刀である。
入刀と同時にあまりにも有名な曲が流れた。
絶え間なく続くフラッシュの嵐は半端な芸能人の披露宴のそれよりもすごい。
笑顔でずっとカメラ目線を保つ彩子に反して
宮城がだんだん不機嫌な顔付きになって来たので
撮影会はお開きとなった。
第一段のイベントが終了し、新郎新婦はお色直しの為に一旦退席となる。
BGMが穏やかな曲調に変わり、招待客は食事と歓談を楽しんだ。
陵南テーブルでは彦一が瓶ビールを片手に早速愛嬌を振りまいている。
「いやぁ~、ほんまにまたこうして皆さんとお会い出来るなんて
わいはもう、嬉しゅうて嬉しゅうて」
「相変わらず大げさだな彦一は」
「そないな事ありませんて仙道さん」
「おい、彦一」
「はい?何ですか魚住さん」
「これはフランス料理か?」
「は?はぁ、たぶんそやないですか?」
「うーん、やっぱり和食が一番だな
バター臭くて堪らん」
「じゃ俺が戴きますよ、魚住さん」
「や、待て仙道
別に俺は食わんとは言ってない」
「な~んだ、残念」
その横では福田が黙々と飲み食いしている。
一方、海南テーブルでは清田が「何故、陵南メンバーと一緒だったのか」と神にしつこく訊いていた。
「だからさっき言った通りだよノブ
新大阪のホームで偶然会っただけ」
「神さん
……やっぱりあの人、変ですよ」
「あの人って?
あ、フッキーのこと?」
「そうっす
だってあの人、新幹線から降りるなり、俺にしか聞こえない声で『俺の勝ちだな』って笑ったんですよ!!
俺、全身鳥肌立っちゃいましたよぉ~」
「へぇ~、…フフフ」
「ちょ、神さん、フフフって
牧さんも何か言って下さいよっ」
「うん?……あぁ、美味いなこの料理」
「牧さん……」
この人は本当にこれで天下のMAKI SPORTSの取締役なんだろうか、と首を傾げる清田だった。
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