あれから17年後


ライトを落とした会場は静かな騒めきに包まれる。

後方の扉にスポットが当たり和装の2人が光の中に照らし出された。

白無垢姿の彩子の美しさにあちこちからため息が漏れる。

割れんばかりの拍手と共に高砂へ向かう新郎新婦と媒酌人。

会場は一気に盛り上がった。

司会者は開宴の挨拶をし、続けて媒酌人の紹介をする。

小さく咳払いをした赤木が立ち上がると、その大きさに改めて驚嘆する客もいた。

兄を心配しギュッと目を瞑る晴子。

その彼女の手に、桜木の手がそっと重なる。

赤木は堂々と落ち着いた口調で、先ほど無事に結婚の儀を終えた事を伝え
2人の略歴、家族、馴れ初めなど紹介。

最後に招待客へ今後の2人への支援と指導を願った。

 「初めてにしちゃ悪くねぇ出来だな」

三井が呟くと、木暮が「あぁ」と頷いた。

そして2人は同時にフゥーと息を吐く。

続いては主賓の挨拶だ。

まずは宮城の勤め先の社長が高砂の横に立つ。

一礼して祝辞を述べた後
「宮城くんにこれほどたくさんの知人友人が居た事に驚きました」と率直な感想を口にし、会場の笑いを誘った。

彩子側からは職場の上司である週刊バスケットボール編集部編集長、相田弥生が祝辞を述べる。

彼女も「結婚しても変わらずパワフルに仕事をこなして欲しい」とこちらも正直な思いを語った。

そして乾杯。

テーブルのグラスに次々とシャンパンが注がれ、黄金色の泡がライトで輝く。

音頭を取るのは2人の恩師である安西だ。

 「それでは、宮城くん彩子くんの前途を祝して…
 乾杯!!」

 『 乾杯!!! 』

皆の声とグラスをぶつけ合う音、やがてグラスを空にした客達は拍手で場を盛り上げる。

 「おぃ、にぃちゃん
 おかわりくれ」

接待係の従業員を呼び止めてグラスを振る高宮。

 「あ、俺も俺も
 今日は飲み放題なんだろ?」

大楠はすでにかなり出来上がっている。

 「おめーら、がっつくなよ
 みっともねぇ」

注意する野間に

 「いいんじゃねーか?
 今日くらいは」

と、水戸が笑った。


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