あれから17年後
ホテルで一番広い宴会場に円卓がおよそ30台程、その周りを招待客が囲んでいる。
だが大柄な客が多いせいか、会場は決して広くは感じない。
既に半分以上の招待客が着席し、和やかに雑談をしていた。
テーブルの中心にはピンクと白を基調としたアレンジフラワーが豪華に飾られていて、その真ん中にキャンドルサービス用の蝋燭が立っている。
化粧室から戻った安西の左右には、三井と木暮が付き添っていた。
このところ、血圧の高い状態が続いている為
安西の体を気遣っての2人の行動だが
客の誰かが、まるで黄門様と助さん格さんのようだと冷やかす。
安西が着席すると、同じテーブルで談笑していた田岡と高頭が起立して頭を下げた。
未だ陵南で現役監督を務める田岡の顔は更に皺が増え
数年前に退職した高頭は、孫の幼稚園の送り迎えをして余生を楽しんでいる。
彩子の上司であり、現・週刊バスケットボール編集長でもある相田弥生は
弟の彦一を巻き込み、憧れの仙道との数年ぶりの再会にテンション上がり捲りだ。
苦笑する仙道に彦一が「えらい、すんません」と頭を掻いた。
大学卒業後、地元の放送局に就職した河合マリは
今はフリーのリポーターとして活躍中だ。
半分はそれが仕事なのか、NBAのMr.フェニックスから、こちらもまた離れようとしない。
「それが、どうした」とスルーされても、もう膨れて引き下がるようなマリではなかった。
相手から上手に話を引き出すと手帳に何やら書き込んでいる。
宴会場に流れる音楽が変わり、司会者から新郎新婦の入場が伝えられた。
いよいよ披露宴が始まる。
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