あれから17年後
ラウンジから披露宴が行われる宴会場への案内が始まった。
一段落した受付では、祝儀袋を束ねながら晴子がため息をつく。
「お兄ちゃん、ちゃんとやれてるかしら…」
「大丈夫ですよ、ハルコさん
お兄さんは、この桜木の次くらいに本番には強い男ですから」
そう言って優しく頷く。
「そ、そーよね!!
お兄ちゃんなら大丈夫よね?有難う、桜木くん」
そんな微笑ましい2人の会話に、横で安田の顔もほころぶ。
そこへ「MAKI SPORTS」の若き重役、牧紳一が小走りで現れた。
ビシッと着熟したフォーマルの光沢が桁外れの高級感を醸し出す。
「すまん
もう始まってしまったか?」
慌てて上着の内ポケットから祝儀袋を取り出した。
「遅いぞ、ジィ!!!」
ガランとしたラウンジに桜木の声が響く。
「申し訳ない
会議が長引いてしまってな
神と清田はもう来ているかな?」
「はい、いらっしゃってますよ」
晴子が答えた。
「それなら良かった
出迎えに清田1人で行かせたもんで、ちょっと心配だったんだが…
そうかそうか」
記帳しながら牧が白いハンカチで額の汗を拭う。
「牧さんもお兄ちゃんとおんなじですね?」
「ん?」
「お兄ちゃんも、未だに湘北のキャプテンやってます」
「あぁ、まぁな」
牧は苦笑した。
晴子もウフフ、と一緒に笑うと桜木が大きな咳払いをする。
「やぃ、ジィ!!
名前書いたらさっさと行けよ」
「おっと、そうだな
確か藤真や魚住も来てるんだったよな?」
「ああ、そーだ
ボスザルもホケツくんも来ているぞ」
「彩子さんも粋な事をするもんだ
こりゃ楽しくなりそうだな」
牧は白い歯をチラリと覗かせて笑うと宴会場に向かった。
「牧さん、やっと年齢が外見に追い付いたな」
安田がボソリと独り言を言った。
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