あれから17年後
最寄りの駅からホテルまではお洒落なショッピングモールが続いている。
今や港横浜の新名所にもなり、どの店も大盛況だ。
そんな中、若い女の子で賑わうファンシーショップにフォーマルスーツの流川楓が居た。
頭にリボンを付けた丸顔のネコのキャラクターが有名なその店で愛娘の紅葉から頼まれた土産を探している。
もっとも紅葉のお気に入りはネコの方ではなく頭巾を被ったウサギらしいのだが
流川には皆、同じようにしか見えない。
明日にはもうアメリカに戻らなければならない。
今を逃せば買うチャンスは無いのだ。
喜ぶ娘の顔を思い浮かべ、父はかなり必死である。
棚からやっとそれらしいウサギを見つけて掴むと
「よう」と声を掛けられた。
「珍しいところで会うもんだな」
「てめぇ……、仙道か」
思わず手にしたウサギを後ろに隠す。
「しばらくだな」
懐かしい顔はずいぶんと日焼けして優しくなっていた。
可愛らしい店内にはあまりに不釣り合いの大男2人が暫し無言で向き合う。
予期せぬ場所での再会は互いの感情ばかりが溢れ出した。
先に言葉を発したのは仙道だった。
「買い物か?」
流川が隠した物を仙道は顎で示す。
「……あぁ」
「可愛いよね、それ
俺もさっき迷ったよ
でもネコにした」
屈託なく笑う。
「ウサギ、子供にか?」
「……あぁ」
「こっちも似たようなもんだ」
仙道は店のロゴが入った袋をヒョイと持ち上げて見せた。
「じゃ、先行ってるぞ
…また向こうでな」
そう言って仙道は店を出て行った。
言いたい事は山ほどあったはずなのに…
「チッ…
酒が入らねぇとダメか…」
流川は頭巾のウサギをポンと叩いた。
「まいったなぁ…」
ホテルに向かう仙道も1人苦笑している。
あの流川楓が子供の為にあんな顔をするのか…
それを見た瞬間、
自分が言おうとしていた事がもうどうでもいいような気がした。
そして改めて時の流れを感じるのだった。
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