あれから17年後


まるで路線バスの車内と見紛うような機内にプロペラ音がパタパタと響いている。

窓側の席で大きな体を折り曲げ、眼下の青い海を見下ろしているのは仙道彰だ。

白く波立つ海面までハッキリとわかる。

朝一番のプロペラ機は離島から本土に向けて飛んでいた。

そこでジェット機に乗り継ぎ最終目的地の羽田へと向かう。

何事も無ければ、招待状に記載された時間には余裕を持って着けるはずだ。

久しぶりの帰郷。

式が終わったら東京の実家に一泊するつもりでいる。

還暦間近の両親は弟夫婦と同居していた。

こんな風に好き勝手をさせてもらえるのも弟と義妹のおかげだと心から感謝する仙道だ。

でも帰った途端すぐにまた「いい加減、所帯を持て」と父に小言を言われるんだろうなと、ひとり苦笑する。

そう言えば、慌ただしい出発で小さな2人の姪っ子達に土産を買い忘れてしまった。

式場の近くで何か見繕って行くかと白い雲を眺めながら思う。

この空はどこまで続いているのか…

ふと、遥か昔の記憶が蘇った。

 『なんでアンタはアメリカで勝負しねぇ』

いつもクールなアイツが、珍しく熱くなって噛み付いて来たんだっけ……

アイツは出席するだろうか。

全く別の道を進んだが、
人生としちゃ決してお前に負けてねぇよ

もし会えたら、そんな風に言ってやろうかなと仙道は思った。

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