あれから17年後
ガラガラと引き戸を開けた池上に続き、流川も店内に入る。
すぐ横の生け簀には今夜も活きの良い魚達が泳ぎ回っていた。
半年前の集まりがずいぶん昔のような、それでいてついこの間のような不思議な錯覚な捉われる。
店は客でそこそこ埋まっていた。
2人は仲居を務める魚住の妻の案内でカウンター席に並んで腰を下ろす。
座ると直ぐに厨房から声がした。
「珍しい組合せだな
知り合いだったのか?」
忙しく包丁を動かしながら魚住がチラリと視線を送る。
「いや、一方通行だよ」
池上がまた苦笑した。
「池上さんはおビール
瓶の方でしたね?
そちら様もご一緒でよろしいかしら?」
魚住の妻が流川に訊ねると僅かに首を振る。
「俺は、日本酒
……神鷹を」
この半年間、ずっと飲みたかった酒の名を口にした。
聞いていた魚住の口角が片方、クィと上がる。
運ばれて来たそれぞれの飲み物の横に、魚住がトンと付きだしの小皿を置いた。
「流川
お前も呼ばれてるのか」
「…ええ
じゃあ、魚住さんも?」
「ああ
でも俺だけじゃねーぞ」
「ん?」
「仙道も来る」
「っっ!?」
流川は瞬間、魚住の顔を見上げたあと身動ぎもせず1点を見つめていた。
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