それからしばらく、滝の周辺の森の中を散策するなど自然を満喫し、陽も傾いてきたところで孫家へと戻ることになった。

「じゃ、そろそろ帰ろっか。そーだ、俺だけイイ思いをするのも悪いからさ、帰りはトランクス、メディカちゃんのこと頼んだよ！」

ニヤリと笑い「横抱きをお勧めするよ。」と、トランクスの耳元でそう囁くと悟天はスーッと空へ向かって行ってしまった。

「あっ！お、おい、悟天！！」

声を上げるトランクスに

「トランクス！絶対メディカ先生のこと落としちゃダメよ！」

「じゃ、お兄ちゃん、お先にー。」

と言うと、少女２人も悟天を追って飛んで行ってしまった。

静まりかえり、陽も落ちてきた山の中で重たい空気を感じるのは自分だけだろうか、とトランクスは自問する。

滝の太い音だけが響く沈黙の中

「あ、あの・・・トランクスさん。すみません・・・。」

と言う遠慮がちな声が聞こえ、その声の主を見ると、申し訳なさそうにこちらを見つめていた。

「あ、いえ・・・。じゃあ、行きましょうか。」

トランクスは固い表情でメディカに近付くと、躊躇いながら左手を背中に、右腕を膝裏にまわすとメディカをゆっくりと抱きかかえた。

ずっと触れたかった、柔らかく花の様な香りを纏った自分の腕の中にある彼女に鼓動が早くなる。

緊張のあまり、呼吸の仕方を忘れそうになりながら

「・・・それじゃあ、行きますね。」

上擦りそうになる声を何とか抑え、トランクスはメディカをあまり意識しないように自分に言い聞かせると、ふわりと浮き上がった。