自分の志の為にメディカと別れ、僻地へと赴いて行ったその男に嫉妬しながらも、そんな志がある事が羨ましいとも思っていると

「ねぇ、それって本当に自然消滅なの？」

と、尋ねる声にトランクスはビクリとした。

「えっ・・・。もう３年も連絡取ってませんし、そう思ってるんですけど・・・。」

「そんなの分からないじゃない。はっきり別れようって話しになったわけじゃないんでしょ？」

「え・・・まぁ、そうですけど・・・。」

「ほらー。ね、連絡取ってみたら？会いに行ってみるのもいいわね！もしかしたら、彼はメディカちゃんのこと忘れられずにいるかもよ！」

とても楽しそうに言う母の声に（おいおい！余計なことを言わないでくれ！）と心の中で叫んでいると

「うーん。でも、向こうからも何もないわけですし・・・。それに・・・。」

「それに？」

「今は自分のことで精一杯で、余裕がないんです・・・。だから、彼のことも忘れてたくらいで・・・。酷いですよね。」

それを聞いたトランクスは以前の自分が思い出された。

メディカの今言った「余裕がない」という言葉の意味がよく分かる。自分も少し前まではそうだったのだ。

そう思うと、彼女も恋などする余裕なんてないのでは、とポツリと思った。

「メディカちゃんてあっさりしてるのね。よかったわ！ずっと、１人の男にこだわってた私みたいにはなりそうもないわね。ふふ！そんなメディカちゃんが次はどんな人を好きになるのか楽しみね！」

ますます楽しそうな母の声に、トランクスの胸に何かが刺さった。

彼女に「余裕」が出来た時、彼女は恋をするのだろうか。

その相手はいったいどんな男なのだろうか。

そう考え出すと得もいえぬ焦燥感に駆られ、自身の拳をグッと握ると、トランクスは研究室へと戻って行くのだった。