研究室で取り組んでいた、飛行機のエンジン部分の作業を中断し、トランクスが休憩も兼ねてリビングへ向かっていると、母ブルマの

「ね、メディカちゃんのむかし付き合ってたボーイフレンドってどんな人だったの？」

というその声で足が止まった。

盗み聞きするつもりはない。ないのだが・・・彼女のむかしの男のことが気にならないと言えば嘘になる。

トランクスは迷いながらも、リビングの入り口の前で密かに耳を澄ませることにした。のだが・・・

「えっと・・・。大学の先輩で・・・優しくて真面目で、でもすごく楽しい人でした。」

と言うメディカのその言葉に、胸が有り得ない程締め付けられ、聞いてしまったことをすぐ様後悔した。

彼女の表情を見ることは出来ないが、その声のトーンから、懐かしむ様な柔らかい笑みを浮かべている顔が想像され、トランクスはグッと唇を結んだ。

見たこともないその男がメディカの心を捉え、仲睦まじくしていたことを思うと悔しくて仕方がない。

思っていた以上にダメージを受けているそばから

「へぇ。メディカちゃんが選んだ彼なら、間違いなさそうね。でも、何で別れちゃったの？」

興味津々と言わんばかりに尋ねる母に、少し間を置いてから

「大学を卒業して、彼も医師になったんですけど、僻地医療を志していた人だったので、東エリアの山奥の病院に研修医として行ってしまって・・・。なかなか連絡も取れないですし、それに仕事の邪魔もしたくなかったので・・・自然消滅って感じですね。」

と、メディカは少し寂しそうな口調で答えるのだった。