カルテの入力を終えると、メディカはぐるっと首を回した。デスクの時計に目を遣ると、夜の８時を少し回っている。

昼間の外来も、病棟で担当している患者にも特に大きな問題もなく、今日１日平穏であった。
そんな１日のまま終わってくれればいいのだが、そう終わらないのが医療という仕事だろうか。

先週、担当していた患者が亡くなった。７歳の少女だった。

メディカにとって、担当していた患者が亡くなるという出来事は初めてのことで、あまりにも衝撃が大きかった。亡くなった患者が７歳の少女だったということも、大きな要因だっただろう。

あまりのショックに震えるメディカを、ホスピや看護師が様々な言葉で支えてくれたが、メディカにはほとんど届かなかった。

自分の知識や経験の乏しさを悔いると同時に、メディカの中には自己嫌悪が渦巻いていた。

自分は彼女が亡くなる少し前まで、ブラの退院祝いの場ではしゃいでいたのだ。

あのまま帰宅などせずに傍にいれば、少女は亡くなることはなかったかもしれない。自分が傍に居て少しでも早く彼女の変化に気付いていれば・・・！そんな後悔がメディカを支配していた。

拭えない後悔で心が折れそうだったが、担当している患者は１人ではない。泣き腫らした顔のまま、その後も勤務を続けた。

「先生、お顔どうしたの？」「目が変だよ先生！」など、正直な子供たちの言葉に、メディカは無理に笑顔を作っては「ちょっと寝すぎちゃったの。」などとかわしながら、その日を過ごした。