新しい住まいとなるマンションは勤務先である西の都の病院が職員用に借りているもので、病院からは目と鼻の先というくらい近く、いつ呼び出されても大丈夫といった場所にあった。

メディカの部屋は２０階建てのマンションの５階。

南向きの１ＬＤＫの部屋には、広くはないがベランダもあり、そこからは西の都の街が広がっている。

病院の近くということで、繁華街からは少し離れているので、隣の建物との距離は十分開いており、覗き覗かれる心配もない好立地だった。

「いい部屋だね！」

と、入るなり言った悟天はブルマの言った通り、一人で提げるには重たい家具や照明の取り付けなどを手伝ってくれ、引越し作業はとてもスムーズに終了した。




「じゃあね、メディカちゃん！」

「うん。ありがとう、悟天君！よかったら、また遊びに来て。」

「えっ、ホントに？！それじゃあ、また来ちゃおうかな。」

悟天は父親譲りの少年の様な笑顔を浮かべながらふわりと浮き上がると、そのまま手を振り青が薄くなった空へと消えて行った。

その姿を見送ると、メディカはベランダから部屋へと戻り、これから生活する新しい自分の住処をぐるっと見回した。

一月暮らしたあの部屋と比べると随分質素になった部屋に苦笑いしながら

（今日から今まで通り・・・。）

そう思うと胸がギュッと締め付けられ、喉の奥が狭まった。

現実に帰って来たのだ。

もう、カプセルコーポへ行くことも、あの一家に会うこともなくなるだろう。

そして、もちろん彼とも・・・。

そう思うと目の奥が熱くなり、次には視界が滲んだ。