「ああ。」

とだけ言うと、ベジータは入ってすぐの壁に背を預けた。

その姿に、ブラのお願いには弱いのだなとメディカが密かに笑いを堪えていると

「そんなとこに立ってないで座れば？」

ソファを勧めるブルマに視線だけ向け、動きそうにないベジータに諦めたような小さな息を吐くと

「ごめんなさいね。こんな主人で。」

ブルマは呆れた口調で言うと

「いえ。それにしても、ご主人はとても鍛えていらっしゃいますね！うーん・・・かなりお強そうだ。」

ベジータを見て唸るように言うクリニクに、ベジータが視線を向けると

「おじさん分かるのね！」

ブラは嬉しそうな顔を向けた。

「ああ、分かるよ。おじさんは格闘技が好きでね。天下一武道会は子供の頃からずっと観ていて、毎回楽しみにしているんだよ。」

「天下一武道会」と聞いてピクリと反応するベジータを見逃さなかったのか、クリニクはベジータに視線を移すと

「ご主人を何処かで見たことがある気がしたんですが・・・武道会に出場されていませんでしたか？」

そう尋ねられ、ベジータは

「ああ。」

とだけ答えると

「やっぱりそうだ！いやー、凄い対戦だったのを覚えてますよ！！あの戦いぶりは、あのサタンなんかとは格が違ってましたから！！もしかしたら、サタンはご主人の足元にもお及ばないんじゃないですか？」

興奮気味のクリニクに一瞬引いたベジータだったが「格が違う」という一言と鋭い見解に驚いた顔をした後フッと笑みを零し、空気が少し和んだ室内で、秘密を知るメディカもクスリと笑みを零すのだった。