夜の１０時を回ってもまだ賑やかな店内を背後に、オープンテラスのテーブルに座り、携帯電話を思い悩んだ表情でじっと見つめる彼女に

「メディカさん！」

と声を掛けると、メディカはとても驚いた様に顔を上げ

「トランクスさん！？」

と、目を大きく見開いた。

「驚かせてすみません。偶然見かけたので・・・。あの、誰かと待ち合わせですか？」

胸が締め付けられそうになるも、何とか笑顔を保ち尋ねると

「えっ？！・・・あ、いえ・・・そうではないんですけど・・・。」

そう言い淀むメディカの答えに大いに安心し、心の中でホッと息を吐いてから

「エアカーを待たせているので、もしよかったら一緒に帰りませんか？」

と、続けると

「・・・ありがとうございます。でも、今日は私は帰らない方がいいと思うので・・・。」

困った様に微笑み、帰宅を拒む彼女に

「え・・・どういう事ですか・・・？」

理由が分からず、怪訝な表情を浮かべ問うと

「・・・えっと・・・ですね・・・。」

と、彼女は躊躇いながらも口を開いたのだった。





「とりあえず帰りましょう！」

そう言うトランクスに促されメディカは店を出ると、トランクスと一緒に道路の向こうに停まっていた赤いエアカーへと乗り込んだ。

「すみません・・・。失礼します・・・。」

初めて乗る高級なエアカーの室内の広さに戸惑い、恐縮しながら後部座席のシートに腰を下ろすと

「いえ。それでは、出発致します。」

運転席から穏やかな声が聞こえ、エアカーは緩やかなスピードで走りだしたのだった。