溜息を吐きながら、メディカに迫った男に黒く濁った思いを抱くのは何度目だろうか。

あの晩のことをヤムチャから聞いたトランクスは、それ以来ずっと黒く重たいモノを抱えていた。

自分がその男を責めることが出来る立場でないことや、メディカを守ったのが自分でなくヤムチャであったことがその原因であるのだが

「男はお前だけじゃないんだ。」

と言われた当然の言葉に、今更ながら焦りを感じているのも原因の１つであった。

同居しているとは言え、彼女と過ごす時間は限られており、そんな中、先日やっと２人きりになるという絶好の機会があったというのに、結局何も進展はないまま終わってしまった。

母の言う通り、せっかくのチャンスを逃がしたのだ――。

また溜息が自然に漏れ、表情を険しくしながら項垂れていると

「社長、本日の予定は１８時からのタブレ社社長との会食で終わりとなっております。」

と、淡々とした秘書の声で物思いから引き戻され

「ああ、分かった・・・。今夜はすぐ切り上げられそうかな・・・？」

そう自分の願望をただ口にすると

「それは社長次第だと思われますが。」

変わらず淡々とした口調で返された。

「はは・・・そうだな・・・。」

と、弱い笑みを浮かべていると、秘書はタブレット型の手帳を見つめ

「・・・ただ、覚えていらっしゃると思いますが、明日から中の都へ出張となっておりますのでお願い致します。」

そう言った秘書に、目を一瞬大きく開くと

「えっ！？・・・あ、あぁ、もちろん覚えてるよ。」

トランクスは誤魔化す様に、笑顔を秘書へと向けるのだった。