名前もうろ覚えなその男性としばらく歩き、都のメインストリートへ出たところで

「あの、私はこっちなので・・・。ここで失礼します。」

そう言って軽く会釈をし、自分の帰る場所であるカプセルコーポレーションの方へと歩き出したところで、がしっと手首を掴まれた。

驚いて手首を掴む人物を見ると

「ねぇ、俺ん家この近くなんだよね。よかったら今晩泊まって行きなよ。ここからなら、西の都病院も近いしさ。」

と、爽やかな笑みを浮かべていた。

しかし、その笑顔の奥に潜むよからぬ雰囲気を感じ取り

「あの・・・今日はちょっと・・・。」

困った様に微笑むと

「アハハっ！安心してよ、何もしないからさ。ただメディカちゃんと２人で話しがしたいだけなんだよ。」

と、手首を掴む手に力を込め、顔を近づけてくる全く信用出来ないその男に

「それなら、また違う機会にしませんか？私、明日の朝早いので、ゆっくりお話し出来ないかも。」

そんな気はさらさらないが、やんわりと、あまり刺激しない様に答え微笑むと

「俺は今夜がいいんだけどな。」

と目をじっと見つめた後、グッと手首を引っ張るその男は、もう一方の手でスーツのポケットからカプセルを取り出すとポンと投げ、現れたエアカーのドアを開けたのだった。

「ちょ、ちょっと・・・！？」

掴まれてる手を離そうとするも、やはり男性の力に抗うことは難しく、そのまま引っ張られエアカーに乗せられそうになっているところで

「おい、嫌がってるじゃないか。離してやれよ！」

という聞き覚えのある声がした。