土曜日。

目が覚めると部屋は薄暗く、ベッドから起き上がり窓の外を見ると、黒い雲が広がり静かな雨が降っていた。

久しぶりの雨に、木々の緑や花たちは日頃の乾きを潤すかの様に滴を纏わせ、いつもは白いコンクリートの路は濃い灰色に染められている。

どんよりとした雲が立ち込める空を眺めながら、それが自分の心を映している様な気がして、メディカは憂鬱になった。

トランクスに付いた微かな移り香に、不愉快な感情が湧いた昨夜の事を思い出し顔を顰める。

よく考えてみれば、本当につまらない感情が心の中に芽生えたものだと後悔し

（あぁぁ・・・。バカだな私・・・。）

と、項垂れるのだった。

企業の幹部クラスともなれば、高級クラブなどといった場所に出入りするのはよくあることで、それも仕事のうちだと分かっていながらも、自分の気持ちが先行してしまったことに恥ずかしくなる。

自分の感情のコントロールが上手く出来なかっただけで、少しでもトランクスを責めてしまったことが申し訳なく、それに最後の秘密の時間があんなふうに終わってしまったことが残念で仕方ない・・・。

休みが重なる時くらいしか、トランクスと会うこともまともに話すこともなく、数日だったが夜少しでも彼と話せた時間は短くも貴重な時間だったと思うと、もう訪れることのない秘密の時間を惜しみながら

（・・・今日は久しぶりに休みが重なったし、少しでも話しが出来たらいいな・・・。）

メディカは胸の中でそう呟くと身支度を整え、朝食が用意されているだろうリビングへと向かうのだった。