「分かってるさ・・・。でも、今はとにかくコイツを完成させてからだ。」

トランクスはそう呟くと、再び飛行機のエンジンと向き合うのだった。

きっと、これを完成させれば全て上手くいく様な気がする。

トランクスの心は、そんな得も知れぬ期待で満ちているのだった。




走らせていたペンを持つ手を止めると、メディカは小さく息を吐いた。

少しずつだが、抄読会で読み上げる文章も形になり始め、少しホッとする。

予定では休暇中には出来上がっている筈だったが、それが狂ってしまったことに苦笑いを浮かべた。

だが、後悔はなかった。むしろ、この休暇中仕事の事を忘れ過ごせたことに感謝しなければいないくらいだと思った。

きっと１人でいれば仕事のことばかり考え、毎日医学書ばかり読み耽り、寝て、起きての繰り返しだっただろう。

パオズ山に行って美しい自然に触れ、孫家の人達と交流し、気の事やドラゴンボールという不思議な球の存在を知る事もなかっただろう。

そう思うと、この夏季休暇は今までの人生の中で、一番刺激的で今まで知る事のなかった世界の扉が開かれた、とても貴重な時間だったと思うのだった。

新しい世界を知ったことで、知らずと胸の内から明るいモノが湧き上がってくる。

明日からまた日常が始まる。

憂鬱でないと言ったら嘘になるが、その日常の先にまた、自分の知らない何かがあるのだと思うと好奇心と探究心が疼いてくる。

「楽しい休暇だったな・・・。」

そう呟くと、売店のおばちゃんの顔が浮かび、この休暇を満喫したことを報告しなくちゃと微笑むのだった。