トランクスは、先程メディカが一瞬見せた憂いを帯びた表情を見逃さなかった。

　部屋へと戻りながら、チラリと自分の右側を歩く彼女に視線を向ける。あの表情の理由を気にしながら歩いていると、前から父、べジータがこちらに向かって歩いて来るのが見えた。

　２人は足を止めると

「父さん、ただいま」

　と言うトランクスに続いて、メディカも

「こんばんは。先程帰りました」

　と、頭を下げた。

　べジータは

「あぁ」

　とだけ言うと、トランクスを見据え

「トランクス。明日は休みだろう。久しぶりに稽古をつけてやる」

　静かだが、強い口調で言われ、トランクスは顔を少し引き攣らせた。

「明日はちょっと……。仕事が入っていて……」

「何……？」

　べジータの目が細められ、トランクスに痛い視線が突き刺さる。

「取引先の会社の創立パーティに出席しないといけなくて……。明日はちょっと……」

　トランクスが困った顔を向けると

「……それなら仕方がないな」

　そう言って立ち去ろうとするべジータに

「あ、父さん！明後日なら大丈夫……」

　いつもなら逃げる様に部屋に戻るところだが、メディカの手前それも憚られ、つい口から滑り出てしまった。

　その言葉にべジータは振り返ると

「明後日だな。忘れるなよ」

　そう言うと、再びリビングの方へと歩き出した。

「はい……。それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」

　トランクスとメディカは、ゆっくりと遠ざかるその後ろ姿に声を掛けるのだった。