「そうですか……。それなら、いいんですけど……」

　トランクスにそう言われたものの、メディカの心はモヤモヤとしていた。

　やはり、他人の家に厄介になるという事に抵抗がある。

　それに、ブルマたちが自分の様な知り合って間もない人間に、何故親切に部屋を提供してくれるのかも不思議であった。

　裕福な人たちには、ボランティア精神の様なものが自然と備わってくるのだろうか……。などと、メディカがぼんやりと考えていると

「昨夜は当直でしたよね。疲れてらっしゃるんじゃないですか？」

　トランクスに不意に尋ねられ

「え？　はい。あ、大丈夫です。昨日は仮眠を取ることが出来たので」

　メディカは話しを振られるとは思わず、少し驚きつつ答えると

「医者って、大変な仕事ですね。先生の話しを聞いて母はげんなりしてましたよ」

　フッと笑う、トランクスのその横顔にメディカはドキリとした。

　時折差し込む、街灯の光に照らされた端正なその横顔に見惚れてしまう。

「どうかしましたか？」

　止まったままのメディカの視線に気付き、不思議そうに尋ねるトランクスに

「えっ？！　あ、いえ。私よりトランクスさんの方が大変ですよ！　あの大企業を背負ってらっしゃるんですから！！」

誤魔化す様に声を張ると

「社長と言っても、俺は大した事はしてないですよ。ここまで会社を大きくしたのは、祖父と母ですから」

　トランクスは自嘲気味に言うと、眉根を寄せて小さく笑うのだった。