途中、メディカは彼女のミスのおかげ（せい？）で、カプセルコーポ一家と親しくなった事を思うと、不思議な感じがした。

　数日前まで医師と患者という関係だったのが、現在は同居人と家主である。

　メディカは医局までの廊下を歩きながら、ぼんやりと思った。

　あの日、そのままマンションに帰っていたらどうなっていたのだろうか？

　マンションから焼け出され、自分はどうしただろうか？西の都にいる友人の家を転々とする羽目になったか、もしくは病院の仮眠室に住み着くことになっていたかもしれない。

　そう思うと、嫌な汗が出て来そうになった。

　決して、カプセルコーポのゲストルームの様な、快適な場所に身を置くことなど出来なかっただろう。

　もし、あのミスが全ての発端なのだとしたら、些細な事で人生や縁というものは変わってしまうものなのかもしれない。

　そう思うと、メディカはこれが所謂「神様のいたずら」というものなのかと、思わずにいられなかった。


　しかし、まさか”あの”カプセルコーポで暮らすことになるとは……。

　世界有数のトップ企業『カプセルコーポレーション』の経営者一家が暮らすあの家に、自分の様な庶民が暮らしていいものなのか……。

　あの家族は決して自分のことをそんなふうに見てはいないだろうが、いずれ自分自身居心地が悪くなる様な気がした。

　そう思うと

「早く部屋見つけないと……」

　と、メディカは溜息混じりに呟くのだった。