朝、トランクスがリビングに入ると、べジータはソファに座り寛いでいた。

「おはよう、父さん」

「あぁ」

　重力室でのトレーニングを終えた後だろう。べジータはスポーツタオルを首に掛け、タンクトップにスゥエットパンツという姿で、ソファに深く腰掛けている。

　己の強さを追い求め続けている父。限界を超える為、永遠のライバルである悟空を超える為。日々鍛錬に明け暮れている。

　そんな父をトランクスは尊敬し、憧れ続けている。一生かかっても越えられないだろう偉大な父だ。

　だが、そんな父にも弱点がある。

「おはよー」

　ポニーテールを揺らしながら、ブラがリビングに入って来た。
すっかり元気になり、入院していたことなどまるで嘘の様な妹に

「おはよう」

　と、トランクスは笑顔を向けた。

　しかし、返って来なければいけない挨拶は１つしか返って来ず、ブラは不機嫌な顔でべジータの傍まで行くと

「パパっ、おはよう！」

　と、声のボリュームを上げた。

　寛いでいたべジータは、その声にビクリと反応し慌てて顔を向ける。

「お、おはよう」

　顔を引き攣らせ、焦りの色を浮かべるべジータに

「カワイイ娘の挨拶を無視するなんて信じられない！！」

　ブラはプイ、と顔を逸らすとテーブルへと向かった。

　そんな娘の後ろ姿を、うろたえた表情で見つめる父に、トランクスは吹き出しそうになるのを必死で堪えた。

　ブラが産まれるまでは、父のそんな表情など見たことがなかった。

　娘という存在に父親がどれだけ弱いのか。トランクスは今回のブラの入院で、それがよーく分かったのだった