「いい！　病院て所は待たされるの！　べジータがあの時間を大人しく待てるわけないわ。そうね……私が連れて行くからべジータは帰りに迎えにきてちょうだい。私、そのまま会社の方に行くから」

　べジータの提案を無碍にするのも悪いので、夫の意見も尊重しつつブルマは答えた。

　腑に落ちないものの、実際地球の病院の世話になどなったことがないべジータとしては、地球の病院というものの仕組みがよく解らない。仕方ないが、ここはブルマに従うことにした。

「チッ！　まあいい。終わったら連絡するんだぞ」

　べジータを納得させると、ブルマは心の中でホッと溜息を吐いた。



「ブラ、起きてる？」

　ブラの部屋に入り、声を掛けると、微かにタオルケットが動いた。ブラが起きていることを確認すると

「病院へ行きましょう。ちゃんと診てもらった方がいいわ」

　ブルマはタオルケットを捲り、ブラを促した。

　弱った表情で頷くブラを、ゆっくりとべジータは抱き上げた。
ブラの身体から、漂うような嫌な熱が伝わってくる。娘の病状が良くないことが、抱え上げた腕を伝ってよく分かった。

　３人は部屋を出て、玄関へ向かった。外に出ると、夏の青空が広がっている。太陽の光は、すでに強いものになっていた。

　ブルマはケースの中から、カプセルを取り出すと、ボタンを数秒押して投げた。
ボン！　という音と共に、赤色のエアカーが現れる。

　ブルマは後部座席のドアを開けてからエアカーに乗り込むと、エンジンを掛けた。
べジータは、ゆっくりとブラを後部席に座らせ、ドアを閉める。

「じゃあ、行って来るわ。終わったら連絡するわね！」

「ああ。早く連れて行って、医者に診てもらえ」

　初めて見る娘の衰弱ぶりに、さすがのべジータも少し動揺しているようだ。

　そんなべジータの姿に、ブルマは口元を緩めたが、すぐきつく結ぶとアクセルを吹かし、西の都の病院へとエアカーを飛ばすのだった。