「無理はしないことだよ。医者だって、生き物なんだから。人生いい事も悪い事もあるからねぇ。１人で抱え込まず、話してみるのも１つの解決策だよ」

　ホスピは穏やかな笑顔をメディカに向けた。その笑顔に、昨夜の出来事が口から零れそうになったのだが

「で、彼氏にでも振られちゃったの？」

　と言うホスピの発言で飲み込んでしまった。

「違います……。本当に大丈夫です。すみません、ご心配おかけして」

「何だ、違うの？」

　つまらないといった様子で、ホスピは口を尖らせている。メディカが気抜けしていると

「じゃあ、昨夜の火事だね」

　ホスピの言葉にメディカはぎょっとした。

「僕の情報網を甘く見ちゃダメだよー」

　目を丸くしているメディカに、ホスピは穏やかな笑顔を向ける。

「ハハ。実は昨夜、病院の方にメディカ君の住んでるマンションの管理会社から連絡があったんだよ。連絡がつかないから、こちらにいないかってね」

　そう言えば、火事のことがあってから、携帯電話の存在を忘れていた。マナーモードにしてあったので余計に気付かなかった。

　今朝、アラームを止めて以来携帯電話を見てもいない。

　昨晩から人に迷惑を掛けっぱなしの自分が嫌になり、がっくりしていると

「いやぁ、昨夜は大変だったろう。だからね、今日は早めに帰りなさい。もし、今晩行く所が無いなら、仮眠室使って構わないから」

　ホスピは労わるように優しく言うと、病室へと入って行った。