「おまたせ」

　ブルマが、キッチンからコーヒーとジュースを乗せたトレイを持ち出て来た。コーヒーのいい香りが、ふわっと部屋中に広がる。

「どうぞ」

　目の前にコーヒーが置かれると

「ありがとうございます」

　と、メディカは軽く頭を下げた。

　ブルマはブラの隣に座ると、にっこり微笑んだ。

「メディカ先生、本当にお世話になったわね。ブラが入院生活を送れたのも、先生のおかげよー」

「そんな。私は何も……」

　担当医というものの、実際はホスピの指示で動いていただけであった。

　仕方の無いことだが、現場に出ると自分の経験値の少なさから、無力さを痛感する場面も少なくない。

「ブラが入院生活を送れたのは、メディカ先生がいたからよ」

「え？」

「きっと、メディカ先生じゃなきゃ、家に帰るってうるさかったわよ、この子」

　すると隣のブラが

「当たり前じゃない。あんな退屈な所、３日も居たらおかしくなりそう！」

　呆れたようにブルマは溜息を吐き

「ほらね。ブラはメディカ先生に毎日会えるから、病院に居たのよね？」

「そうよ！私、メディカ先生が気に入ったんだもん！」

　目の前の少女のストレートな言葉に、メディカは驚いた。自分のどこが気に入られたのか、さっぱり分からない。ただ、好意を持ってくれているのは、素直に嬉しかった。

「ありがとう」

　メディカはブラに笑顔を向けた。

　そんなメディカを、ブルマはまじまじ見ると

「ねぇ。先生って、普段はそんな感じなんだ？」

　その言葉に、飲もうとしていたカップを持ったまま、メディカは動きを止めブルマを見た。

　吸い込まれるような大きな瞳で見られドキっとしていると

「白衣着てる時は締まって見えるけど、脱ぐと締まりがなくなっちゃうのねー」

　ブルマは楽しそうに笑った。