ロビーに入ると

「メディカ先生、いらっしゃい。待ってたわよー！」

　ブルマがにこやかに迎えてくれた。

「あ、こんばんは。お、お邪魔します」

　メディカは慌てて、挨拶をした。

「いいのよ。こちらこそ、わざわざ来てもらって悪いわね」

「いいえ。こちらのミスですから……」

　ブルマに診断書の入った封筒を差し出し

「本当に申し訳ありませんでした」

　と、頭を下げた。

「いいのよ。今週末から夏休みだから、それまでに取りに行けばいいと思ってたし」

　ブルマはそう言うと、封筒を受け取った。

「本当にすいませんでした。では、あの……私はこれで、失礼します」

　そう言って、後ろに一歩下がろうとすると

「あら、せっかく来てくれたんだから、お茶でも飲んで行ってよ」

　と、引き止められた。

「あ、いえ。もう遅いですし……」

　やんわりと断るも、今度はブルマに手を掴まれ

「いいから、いいから。ウチの事は気にしないで！」

　とグイっと引っ張られた。

「先生、気にしないで。パパもお兄ちゃんもいないから！」

　メディカはブラに背中を押され、階段を上りながら

「あの、でも……」

　と、オタオタしながらメディカは強引に階段を上らされ、彼女たちの居住スペースになっている中２階へと案内された。

「メディカ先生と、ゆっくり話しがしたかったのよー」

　ブルマは楽しそうに話しながら、長い廊下を進んで行く。そして、メディカは突き当たりの部屋へと通された。

　そこはリビングとダイニングを兼ね備えた広い一間になっていて、メディカは７人掛けのダイニングテーブルを勧められた。

「コーヒーでいいかしら？」

　ブルマに問われ「は、はい」と答えると、ブルマはにっこり笑い、隣のキッチンに消えて行った。

「先生が家に来てくれて、ブラすごく嬉しいわ！」

　ブラはメディカの向かいに座り、はしゃいでいる。

　その様子に、ブラがすっかり元気になったことを実感し、メディカは医師として嬉しく思った。

　患者が元気を取り戻し、笑顔で日常の生活に戻れるように。

　そういう気持ちで全力を尽くすのが、自分たち医師の役目だという事を再確認するのだった。