コンコン。と、軽くノックをすると

「はーい」

　と、よく通る声がした。

　メディカは短く息を吸うと「失礼します」と言い、ドアを開け病室に入った。

　両親であろう水色の綺麗な髪をした女性と、目つきの鋭い男性がベッドの側から振り返り、こちらを見ている。

　メディカは静かにドアを閉め病室に入ると

「今回、ブラさんの担当医となりましたメディカと申します。指導医のホスピと一緒に治療を担当させていいただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」

　ゆっくりとした口調で挨拶をすると、丁寧にお辞儀をした。

「へー、女医さんなんだ」

　女性は驚いたふうに言ってから

「こちらこそ、娘のことよろしくお願いしますね」

　と、明るい笑顔で返してくれた。

　その笑顔にホッとしながら

「それでは診察をさせてもらいます」

　メディカはベッドの方へ向かった。

　ベッドには、母親譲りの髪色と大きな目をした可愛らしい少女が横たわっていた。
点滴のおかげだろう、顔色も悪くはなく呼吸も安定している。

「お腹、少し触らせてね」

　尋ねると少女は小さく頷いた。

　その優しい口調と笑顔に、ブラの警戒心は一気に解けていった。
女医だったことも大きな原因だっただろうが、決してそれだけではなかった。

　ブラはお腹の触診を受けながら、メディカの様子を窺っていた。
艶のある黒髪に、白い肌が際立っている。ふんわりとした優しい雰囲気を纏い、自分が知っている大人の女性の中にはいないタイプだった。

「はい、ありがとう」

　触診を終え、メディカはしゃがんでブラに目線を合わせると

「今日からよろしくね、ブラちゃん。何かあったら、私か担当の看護師さんに遠慮なく言ってね」

　優しく微笑んだ。

「よろしくお願いします……メディカ先生」

　ブラは深く頷いてから、小さく微笑んだ。