「フッ。まだやれそうだな。……来い、トランクス！」

　構えるべジータに、先程より増したスピードでトランクスは拳と足技を繰り出した。

　空を切った拳がべジータの頬に掠り、一筋の血が滲むと

「少しはマシになったな」

　そう言って口角を上げると、べジータはトランクスを上回るスピードで背後に回り、蹴りを繰り出した。

　それにトランクスは反応し、振り向きざまに右腕でガードする。ジリジリと腕に痛みが走ったが、そのまま右脚を勢いよく蹴り出した。

　しかし、べジータはそれを左腕でガードするとすぐさま右の拳を見事トランクスの鳩尾へと押し込んだのだった。

　勢いよく壁まで飛ばされたトランクスはそのまま倒れ込み、苦痛の表情を露わにしている。

「今日はここまでにしておいてやる。これ以上やってもお前の力が増すことはなさそうだからな」

　べジータは吐き捨てるように言うと、そのまま重力室を出て行くのだった。

　顔を歪めながらゴロリと仰向けになり、遠ざかって行く父の背中を、肩を激しく上下させながらトランクスは見つめていた。

　修行を怠っていることが、これだけの差を生むのかと痛感する。

　常に上を目指す者と、現状に甘んじている者の差をまざまざと見せつけられ、溜息とも呼吸を整える為ともとれる深い息が漏れた。

　子供の頃は遊び場だったこの場所は、今は自分の限界をまざまざと感じさせる場所になった気がして、トランクスは起き上がると、逃げる様に重力室を出るのであった。