サラリとした、肩まで伸びた栗色の髪。

　陽に照らされた、透き通るような白い肌。

　俺を見つめる大きな茶色の瞳。

　そして「トランクスさん」と俺の名を呼ぶ、優しく心地の良い声。

　すっかり、梨子さんという存在に心を捉えられてしまった俺は、この並行世界で過ごす毎日に、胸が弾んで仕方なかった。

　梨子さんを見るたび、話すたびに、表情が緩みそうになり、そんな自分に

　コラ！　任務中だぞ！

　叱咤し、自分を戒めた。

　だが、すぐにその戒めも呆気ないものになってしまい、彼女のことばかり考えてしまっている自分がいる。

　……もしかして、これが「恋」というものなんだろうか？

　彼女に対する気持ちを意識した瞬間、俺の中で何かが弾けた。

　それは、硬く閉じていた蕾から、一気に花弁が開き、咲き誇りはじめたような……そんな春の訪れを感じるものだった。

　身体の奥から込み上げてくる温かい感情に、少しの恥ずかしさと嬉しさを感じながら、俺は今日も、梨子さんの姿を見つめていた。