いつもは、もっと巧く弾けるのに……！

　って。

　そう思いながら、ピアノを弾いてた。

　今度弾く時は、満足のいく演奏をしなくちゃ！

　心の中で、密かにそう意気込んでると

「ま、あんた天才だから大丈夫か」

　マコちゃんが口にした言葉に

「……天才じゃないし」

　今度は私が、ジトっと目の前の顔を睨んだ。

「母さんは『梨子は天才だ』って言ってるけど」

　悪びれたふうもなく言うマコちゃんの言葉に、思わず目を大きくして、そのまま、マコちゃんをじっと見つめてると

「ねぇ、母さんって……」

　って言うブルマさんを遮って

「ああ。梨子のピアノの先生、私の母なんです」

　マコちゃんが答えた。　

　そう。

　私のピアノの先生は、マコちゃんのお母さん。

　五歳だった私に「天才」だって言って、ピアノを始めるきっかけを作ってくれた人。

　おばさんは、私にとって「恩人」。

　だって、おばさんに出会ってなかったら、私はきっとピアノを弾いてなかったから。

　だから、おばさんには凄く感謝してる。

　音楽科のある高校に通い始めた今でも、おばさんのレッスンを受けに、マコちゃんの家に通ってる。　

　学校にも凄い先生はいるけど、おばさんのレッスンが一番好き。

　何でって、おばさんのことを尊敬してるし、相性もいいから。　

　だから、すごくリラックスしてピアノを弾くことが出来る。
　
　学校の先生とは、あまり相性がよくないんだよね……。

　だから、ピアノを弾いてても、つまらない。