「六十五点」

「わぁ、微妙……」

「微妙……。じゃないでしょ、ったく。母さんだったらもっと辛いからね」

「でも、スゴイよね。一週間以上弾いてないと、指が動かないの！」

「感心してる場合じゃないでしょ。ご飯食べ終わったら、また練習しなよ」

「うん……」

「いい？　あんたのせいで、私まで母さんに怒られるのはヤダからね」

「はい……」

「……まぁ、こんなことになって、ピアノに触ってなかったんだから仕方ないけど……」

「うん……。分かってる。ちゃんと練習するから」

「……そうしてよ」

　そう言うと、マコちゃんはお皿の上の海老フライをパクリと食べた。

　マコちゃんの小言に少しへこみながら、目の前に置かれたローストビーフに癒されようと思って、お箸を伸ばすと

「ねぇ、昼間の演奏が六十五点って、厳しいんじゃない？　十分素敵だったと思うけど」

　隣りのテーブルのブルマさんは、軽く目を見開いてた。

　それに同意するように

「ええ。すごく素敵な演奏会だったわよ」

「ウン！　ブラ、またききたい！」

　ブルマさんのお母さんと、ブラちゃんは笑顔を向けてくれ、その笑顔に

「あ、ありがとうございます。よかったら、また聴いて下さい」

　ヘラっとした笑顔を向けると

「うん、凄く綺麗な音楽だったよ。俺もまた聴きたいな」

　斜め前のテーブルに座るトランクスさんにも微笑まれ、ドキン！　と胸が跳ねた。

　ああ、ダメ……！

　私、その笑顔に弱いんだから！

　全身が熱くなるのを感じながら、私は「ぜ、是非！」って答えるだけで、精一杯だった。