次の曲は、明るく華やかな曲だった。　

　速いテンポで流れる曲は、何だか優雅な気分にさせてくれる。

　その音楽を奏でる、意思を持った別の生き物みたいに動く梨子ちゃんの指は、力強くて繊細で。

　それに感嘆の溜息が漏れそうになってると、後ろに気配を感じた。

　振り返ると、そこにはトランクスとべジータが立っていて、ピアノを弾く梨子ちゃんを驚いた顔で見つめてる。

　あら？

　……。

　ちょっと、待って。

　何、このレアな感じ。

　思えば、この二人が……特にべジータが音楽を聴いてるなんて、珍しい光景じゃない？

　ピアノの演奏を聴くべジータの、今まで見たこともない姿に思わず笑いそうになってると、曲はゆったりとしたメロディで終わっていった。



「スゴイわ、梨子ちゃん！」

　パチパチと興奮気味に拍手をしながら椅子から立ち上がると

「あ、ありがとうございます」

　梨子ちゃんは、恥ずかしそうに微笑んだ。

「ホント。とっても素敵だったわー。ねぇ、ブラちゃん？」

「ウン！　ブラもピアノひきたい！」

　満足そうなママと、ピアノに興奮して駆け寄って行くブラに、梨子ちゃんは嬉しそうな、幸せそうな表情を浮かべてた。

「梨子ちゃんが、天才ピアニストっていう話し、嘘じゃないわね」

　真琴ちゃんにニヤリと笑顔を向けると

「あの子、音楽に関してはホント天才なんですよ」

　そうやって、いつもの涼しい顔で答える真琴ちゃんの顔は少し誇らしげに見えた。