まぁ、思春期真っ只中の男子が親を避けるのは自然だろうけど。

　そう思っていると

「あの子の世界に、べジータがいないからかな……」

　ブルマさんは寂しそうな微笑みを私たちに向けた。

　あの子の世界？

　いない？　

　べジータさんが？

　不思議そうな顔を、きっと梨子もしていたんだろう。

　そんな私たちを見て

「未来から来たって言ったでしょ？　あの子」

　ブルマさんはそう言うと、少し躊躇ってから

「あの子の住む未来の世界は、この世界とは違うのよ……」

　眉を寄せ、笑顔とも何とも言えない微妙な顔を私たちに向けると、ブルマさんは未来のトランクスさんのことを話し始めた。




　話し終え、コーヒーを一口飲み込んで小さく息を吐くブルマさんに、私たちは言葉を発せなかった。

　悲劇の物語を見聞きした時の、何とも言えない重い空気。

　どうすれば晴れるのか分からず、しばらく沈黙していると

「ホント、あいつ苦労してるよなぁ」

　空気を読んでるとは決して言えない呑気な声が、見事に重い雰囲気をぶち壊してくれた。

「あんたって、ホントに空気読めないわよね！！」
　
　ブルマさんは、まだ食べ足りなかったのか、大きな肉まんを頬張る悟空さんを睨みつけると

「苦労どころじゃないわよ！　あの子がどれだけ辛い目に遭って来たと思ってるの！！」

　続けて大きな声を出した。

　そりゃ、ブルマさんが怒るのも無理はない。
　
　トランクスさんの住む世界にはべジータさんも悟空さんも、仲間たちもいない。

　自分以外に頼れる者、並外れた力を共感し合える仲間がいない。