茶色い瞳を潤ませながら

『トランクス君……。もっと、色々教えてくれる……？』

　耳元で囁く、夢の中の梨子の姿が頭の中で鮮明に甦り、体はカァァァ！　と熱くなると、体の疼きも感じ始めた。

　慌てた俺は

「ゴ、ゴメン！　あの……ちょ、ちょっと、トイレ行ってくる！」

　そう言うと、逃げるようにその場を離れた。



　途中にあった、公衆トイレの個室に逃げ込むと

「ハァァァ……」
　
　と、深く息を吐いてから

「何やってんだ、俺……！」

　ガクリと項垂れた。

　また、今朝の夢を思い出すなんて……！

　あの夢のせいで、梨子のことを意識してしまってる自分に

　梨子は、たまたま夢に出てきただけだろ？！

　何とも思ってないだろ、俺！

　だって……俺の彼女はマイちゃんなんだからな……！

　そう言い聞かせて、妙な気が起こりそうな自分を何とか落ち着かせた。

　たかだか夢の中のことで、こんなに動揺してる自分に

　俺が好きなのはマイちゃんだ！！

　強く言い聞かせてから、トイレを出た。

　あぁぁ……まったく。あの夢のせいで、調子が狂う……。

　疲れたように息を吐きながら、のろのろ梨子のところへ戻ってると、一見爽やかそうな男が、梨子に話しかけてるのが目に入った。

　困った顔を浮かべる梨子に迫ってるようすはどう見てもナンパで、それを確信すると何故かイラッとして、歩くペースは速まった。

「梨子！」

「！　……トランクス君」

「待たせてゴメン」　

「う、うん……！」