ツッコミながら、必死に平常心を保って

「だ、大丈夫！　これぐらい、平気だから！」

　そう言って、サッと腕を自分の方に寄せると

「ホントにごめんね……」　

　苦笑いを深める梨子に「大丈夫だから」そう繰り返して、動揺を追い出した。

　……まったく。

　あの夢のせいだ……。

　あの夢のせいで、梨子を意識しちゃうんじゃないか！

　何で、今日に限ってあんな夢見たんだよ！
　
　俺は心の中で恨み言を繰り返しながら、人で賑わう休日のショッピングモールを歩いた。
　


　昼下がりの遊歩道は街路樹が日差しを遮り、涼しげな影の道を作ってた。

　そこにはカップルたちの姿も見え

　……もしかして、俺たちもそんなふうに見えてるのか……？

　隣りを楽しげに歩く梨子をチラリと窺うと、今更女の子と二人きりで歩いてることを急に意識して、落ち着かなくなった。

　緊張からか、口の中の乾きを感じ始めてると

「気持ちいいねー」

　梨子が青い空を仰ぎ、両手を大きく前後に振って歩き出した。

　気持ち良さそうに目を細め、子供みたいに振る舞う梨子に

　こういうとこが、歳上に見えないんだよな……。

　なんて、呆れてると

「トランクス君。ドライブ、誘ってくれてありがと！」

　いきなり、笑顔を向けられ焦った。

　ふいに向けられた自然な笑顔は……可愛くて、一瞬ボーっとしてしまった。

　すると

「トランクス君？」

　不思議そうな顔がすぐ下から見上げていて、また今朝見た夢が頭の中に甦った。