「わぁー……！　すごくキレイ！」

　目の前に広がる景色に、梨子の表情はパァァと輝いた。

　広がる青い海。

　海に沿って造られた、白い遊歩道。

　その先には港があって、クルーザーが一隻停泊してる。

　港の反対側には、白で統一されたショッピングモールやホテル、ビルが建ち並んでて、同じ都でもこのエリアは都の中心とは趣きが違う。

「海外のリゾートみたい！」

　梨子の言う「海外」っていうのがよく分からないけど、嬉しそうな顔にホッとして

　ここに来て良かったな。

　そう思ってると、梨子が両手を広げ

「潮の香りがする……」

　目を細め、鼻から大きく息を吸い込んだ。

　海からの風を全身で受け止めるようなその姿に、俺も思わずつられるように目を閉じて、潮の香りを吸い込んだ。

　久しぶりのその香りは、血の流れと一緒に、体の隅々にまで運ばれて行く気がした。

　そう言えば、こんなふうに自然を感じるのって久しぶりだな……。

　その事に気付くと、何となく過ごしてる毎日が、頭の中に浮かんでは消えた。

　青く広がる海を眺め、単調に過ぎる毎日のことを思ってると

「あの……トランクス君……」

　控えめな声が聞こえてきた。

「……何？」

「あ、あのね。お腹空いてきちゃって……」

　眉を下げて笑う顔に

「あ、そっか」

　自分は早めの昼食を食べてから出て来たけど、梨子はまだだったことに気付き

「じゃあ、何か食べに行こう」

　そう言うと、梨子は申し訳なさそうに

「うん」

　って頷いた。