梨子がピアノを弾くって知ったのは、夕食の時だった。

　ママにおばあちゃん、それにブラ、そしてお兄ちゃんにパパまで、梨子の弾くピアノを聴いたらしい。

「聴きたかったなぁ」って言うおじいちゃんに「じゃあ、コンサート開きましょう！」って、ママが嬉しそうに提案すると、梨子は慌てて首を振ってた。

　そんな、梨子のピアノの話しで盛り上がってるママたちを横目に

　ピアノなんて、そんなに聴きたいもんか？

　まぁ、別の「地球」の音楽に興味がないわけじゃないけど……。

　ピアノの演奏なんて、どこの星だろうと退屈に決まってる。

　俺はそう思いながら、ピアノの話しからまたトレーニングの話しになって、とばっちりを受けるのはゴメンだと思い、夕食を食べ終わるとすぐに部屋へ戻った。

　ただ、真琴が梨子のことを「天才」と言ってたことは少し気になった。

「天才」っていうくらいだから、結構うまいんだろう。
　
　じゃなきゃ「天才」なんて言葉、簡単には使わない。

　その証拠に、ママたちは梨子を賞賛してた。

　……気になるな。

　一体どんな演奏なんだ？

　俺は、レストランを出る時に視界の端に見えた、俺に何か言いたげな梨子の顔を思い出した。

　俺から話し掛けることもないって思ったから知らんふりしたけど、何を言おうとしてたのか気になる。

　ただ、下手に話しかけでもして、ママにからかわれるのも面白くない。

　そう思った俺は、そのまま部屋へと戻った。